法定相続人でない人に加えて、相続欠格原因にあたる人、相続人から廃除された人があげられます。
(回答:弁護士 大澤一郎)
1.相続欠格
相続欠格とは、被相続人の生前、法定相続人となる者(推定相続人)が、被相続人の財産を相続させることが社会的な正義に反すると認められる場合に、当然に相続権を失うとする制度です。
具体的には、次の5つの場合が規定されています。
- 故意に被相続人または相続について先順位または同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者
- 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
- 詐欺または強迫によって、被相続人が、相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者
- 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者
なお、5に関しては相続人の行為が相続に関して不当な利益を目的とするものであることを必要とするとした判例があります(最高裁平成9年1月28日)。
2.推定相続人の廃除
相続欠格には該当しない場合であっても、被相続人は自ら申し立てることによって推定相続人から相続権を奪うことができます。
これを廃除といいます。相続欠格は該当事由が認められれば当然に相続権を失いますが、廃除のためには家庭裁判所の審判又は調停を経る必要があります。
本来、被相続人は遺言によって財産の処分方針を決めることが出来ますが、遺留分という限界があります。
そこで、廃除はこの遺留分を否定するための制度ということができます。
廃除が認められるためには、相続人がなんとなく気に食わないといった主観的感情だけでは足りず、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」といった客観的事情が認められる場合に限られます。
なお、推定相続人の廃除は認容率が20%弱と裁判所は慎重な姿勢を見せています(2011年度司法統計)。
「著しい非行」の例としては、酒に溺れること、ギャンブル、犯罪などのほか家族を遺棄することなどが考えられます。
例えば、親の土地を無断で担保に入れて金を借りる、家の財産を勝手に売却、酒、女、競輪、競馬などに多額の金をつぎ込んでいた事案が「著しい非行」にあたるとされた場合があります(新潟家裁柏崎支部審判昭和46年11月8日)。
3.まとめ
以上のように、推定相続人が相続人権を失う場合は極めて限定的な場合に限られています。ですから、遺留分による限界はありますが、遺言を積極的に活用していくほうがより実用的だということができるでしょう。
(文責:弁護士 大澤一郎)