事案の経緯について
お客様は、30代の男性です。故人である父親は、お客様に全ての遺産を相続させる内容の遺言を残しておりました。
そのような状況の下、父親が亡くなり、父親の遺産の全てをお客様が相続しました。
すると、他の相続人である兄弟からお客様に対し、遺留分減殺請求(遺言によっても侵害されない、法律上定められた相続人の持分を請求することです。)がなされ、父親の遺産を巡って兄弟間での争いが発生してしまいました。
当初は、お客様ご本人で対応をされておりましたが、他の兄弟からの請求額は下がらず、数年間も話がまとまらなかったことから、当事務所にご相談に来られました。
事案の概要
お客様の故人との関係 | お客様は故人の息子でした。 |
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相続人の関係 | 両親と2人の兄弟という家族構成で父親の遺産を巡って争いになりました。 故人の妻はすでに亡くなっていましたので、相続人はお客様を含めた2人の兄弟のみでした。 |
遺産の内容 | 預貯金、不動産、株式など(遺産総額約1000万円) |
解決までの流れ・時間
当事務所にご相談に来られてからは、半年ほどで交渉により解決いたしました。
本件は、兄弟間の感情的な対立が激しくない事案で、両当事者の法律上の知識が十分でなかったことから、争いが発生している状況でした。
そこで、当事務所が代理人として、お客様と相手方相続人の間に入って、遺留分減殺請求の実務上の見解などを説明し、遺留分減殺請求の金額を下げてもらうよう交渉いたしました。
当初、相手方の相続人は、特別受益等の主張(生前お客様は、父親から贈与を受けていると思われるから、その分遺留分減殺請求の金額をあげてほしいなどの主張)もしておりましたが、早期解決を呼びかけるなど交渉を続け、半年ほどで合意に至りました。
結果としては、当初相手方が請求してきた金額よりも減額した形で、遺産分割協議書を交わして合意をいたしました。
弁護士からのアドバイス
- 遺留分減殺請求をはじめ、相続に関しては、特別受益(故人から生前に贈与を受けたりした者がいた場合に、相続に際して、当該贈与(特別な受益)を相続分の前渡しとみること)や寄与分(故人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者があるときに、相続の際に、当該寄与を考慮して公平を図る制度)など、法的に複雑な制度が多数あります。
これらの知識の有無、相手方への伝え方によって、解決水準や解決スピードが大きく変わってくることがありますので、相続の案件については、早期に正確な知識を理解することが重要になります。 - 死亡後の相続人間の争いを防ぐために、遺言書の作成をしておくことは、とても有効です。本件についても、亡くなった父親は、遺言を作成しておりました。
しかし、この遺言書には、遺留分(遺言によっても侵害されない、法律上定められた相続人の持分のことです。)について考慮されていなかったことから、本件では争いになってしまいました。本件の遺言書が、他の相続人の遺留分に配慮した内容になっていれば、そもそも争いが発生することはありませんでした。
相続の際には、突然少なくない財産が動くことになるので、これまで対立のなかった親族同士でも争いになることが珍しくありません。相続での争いを防ぐためには、相続が発生する前に、正確に遺言書を作成しておくことはとても重要になります。
※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが関係者のプライバシー保護等に配慮し事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。