事案の経緯について
相続発生後に、一部の相続人の代理人として遺産分割協議を行った事例です。
今回発生した相続の事例では、遺言はなく、主な遺産としては、不動産と預金でした。
相続人は、子3名でした、1名は被相続人と同居していましたが、他の2名はそれぞれ結婚して実家を出ていました。
相続人間では、法定相続分の割合で相続すること、実家はそれまで被相続人と同居していた者が相続することは何となく決まっていましたが、相続人間が長い期間疎遠になっていたこともあり、連絡を上手く取り合えず、遺産分割が進んでいない状態にありました。しかも、遺産の金額が、相続税の納付が必要な金額でしたが、相続税の申告期限まで残り数ヶ月しかない、という状況でした。
実家を出ていた相続人の1人が、遺産分割と相続税の申告を進めるべく、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
事案の概要
相続人 | 子3人 |
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遺産の内容 | 不動産、預金など |
解決までの流れ・時間
弁護士が受任後、相続税の申告期限が迫っていたため、早急に他の相続人に連絡をとり、遺産分割をすぐに進める必要があることを説明しました。
遺産の額の確定を行うために、不動産登記簿や預金通帳を取得しましたが、依頼者は実家を出ていたため、どのような遺産が存在しているのか、正確には分からない状態でした。
取り寄せた預金通帳の記載を詳しく分析し、当初は分からなかった財産を発見するなど、遺産の調査を行ったり、不動産の評価を不動産業者に算出してもらうなど、遺産の額の確定を進めました。
並行して、税理士の先生にもついていただき、相続税の申告の準備を進めました。
時間がなかったことから、他の相続人と直接会って話をする機会を設けるなど、早急に手続を進めました。
その結果、相続税の申告期限の少し前に遺産分割協議を成立させることができ、無事に相続税の申告ができました。
弁護士からのアドバイス
相続税の申告期間は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない金額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかってしまう場合があります。
相続税の申告を円滑に行うためにも、遺産分割は早めに進める必要があります。
「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と聞くと、時間的に余裕があると思われる方もいらっしゃいますが、遺産の調査のための諸手続には時間がかかるものが多いため、実際にはそれほど時間的余裕はありません。
遺言がなく、遺産の額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるような事案では、相続発生後、なるべく早く遺産分割の手続を進めることをお勧めします。
※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが関係者のプライバシー保護等に配慮し事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。