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事案の経緯について

  1. 不動産賃貸業を営んでいた父親が死亡。遺言書あり。遺言書の内容は、子2人がそれぞれ、遺言書作成当時の父親の財産の半分ずつを相続するような内容。
  2. 父親は、亡くなる5年ほど前から、一人で歩行をすることが出来ず、介護を要する状態になっており、施設に入居していた。
  3. 生前の父親が上記の状態の中、父親が死亡するまで、父親の預金から毎月のように高額のお金が引き出されていた。父親が死亡した時点で、長男が相続することになっていた預金は残高が0円になっていたのに対し、次男が相続することになっていた預金は、残高に変更がなかった。
  4. 父親の口座から勝手に引出がなされていたのではないかと疑った長男が、勝手に引き出された金銭の返還を請求できないかとご来所。

解決方法

  1. まずは、金融機関から取引履歴を取寄せ、高額な引出し行為をすべて抽出しました。その後、被相続人の当時の状態についてヒアリングを行い、被相続人によるものでないと疑われる引出行為を調査・選定しました。
  2. 被相続人によるものでないと疑われる引出行為について選定した後、弁護士が代理して話し合いの提案をしたものの、次男は被相続人による引出であると主張したために話合いは決裂しました。
  3. 裁判所に、不当利得返還請求調停を弁護士が代理して申立てをしました。調停での話合いの結果、当方の返還請求に相手方が応じ、一定の金銭の回収をすることができました。

事案の概要

亡くなられた方 父親 日野航一様(仮名、85歳、千葉県船橋市在住)
相続人 長男 日野宏樹様(仮名、60歳)
次男 日野幸樹様(仮名、55歳)
遺産の内容 不動産
預貯金
現金

弁護士からのコメント

  1. 自分以外の者が勝手に預金から金銭を引き出した場合には、引き出された者は、返還請求を行うことが出来ます。このような返還請求権を有する者が亡くなってしまった場合でも、このような返還請求権自体も相続の対象となるため、相続人は、故人に代わって返還請求を行うことができます。
  2. もっとも、被相続人の預金から、勝手に引き出した行為については、返還請求をする者が証明をしなければなりません。被相続人が亡くなってしまうと、贈与の約束の有無や、被相続人から依頼されて引き出されたのか否か(勝手に引き出したと言えるかどうか)について、証拠がないことが多々あり、預金の使い込みの事案については、実務上、立証が難しい事案とされています。
  3. 本件では、預金の取引履歴を取得可能な限り取得し、引出行為の全てを抽出しました。また、引出行為が行われた当時の被相続人の状態とも照らし合わせ、引出行為の不自然さ、不合理さを主張していきました。本件では、遺言書も作成されていたので、被相続人の意思(子2人に平等に分けようとしていた意思)からも、引出行為の不自然さを主張しました。
    調停での話合いの結果、当方の返還請求に相手方が応じ、一定の金銭の回収をすることができました。

預金の使い込みの事案については、実務上立証がとても難しいと言われています。もっとも、不当な相続で終わらせないため、立証の可能性の点について専門家の意見を聞いておくこと自体は重要です。お気軽に弁護士にご相談いただければと思います。

※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが、関係者のプライバシー保護等に配慮し、事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。