事案の経緯について
本件では、相続開始から1年以上経過していましたが、いまだに遺産分割協議が整っていませんでした。相続人の当事者同士で話をしたところ、主に不動産の評価をめぐって争になっておりました。
姉としては、被相続人と生前同居しており、晩年被相続人が老人ホームに入った際には頻繁にホームに通い身の回りの世話をしているといった事情もあり、法定相続分を超える取り分を主張したい(寄与分の主張)という意向がありました。
妹としては、被相続人の通帳にある支出の説明を求めたい(使途不明金の主張)、(姉だけ通学した)大学の学費等を考慮して欲しい(特別受益の主張)という意向がありました。
なお、遺言はありませんでした。そこで、弁護士が代理して、相手方と遺産分割協議の交渉をすることになりました。
事案の概要
お客様の故人との関係 | お客様は故人の姉でした。 |
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相続人の関係 | 相続人には、被相続人の子2名(姉妹)がいました。相続人2名の間で、遺産分割協議を行いました。 |
遺産内容 | 自宅不動産と預貯金 |
解決までの流れ・時間
弁護士が代理して、相手方と書面と電話で交渉を続けました。半年ほど相手方と交渉をした結果、無事に遺産を分割することができました。家庭裁判所への申立を検討する程、ギリギリの交渉となりましたが、何とか調停前の話合いで解決することができました。
最終的には、不動産の評価を調整して、不動産を当方(姉)が取得し、相手方が預貯金と代償金を得る形で解決をしました。
不動産の評価については複数の査定を取りましたが、総合的に評価して、当方(姉)が2分の1以上の取り分を得たと考えられる内容で妥結に至り、依頼者様(姉)も納得しての解決をしました。
弁護士からのアドバイス
1.不動産の評価はトラブルになり易い
本件でも不動産の評価について、双方から様々な主張が出ました。不動産の評価は、その金額の乖離も大きいことが多く当事者間の話合いでは困難になることが一定数あります。
2.寄与分、特別受益、使途不明金の主張は長期化し易い
法律の定める相続分(法定相続分)を調整する、法的な主張が民法には規定されています。代表的なものは寄与分、特別受益ですが、その評価については様々な解釈、裁判例があります。
今回主張のあった、大学の費用についても、これを特別受益として認める解釈・裁判例も、認めなかったものも双方あります。
第三者を挟まず、当事者間の交渉の段階で、このような主張があった場合に、どのように評価するのかは難しい問題です。
一般には寄与分、特別受益を考慮して欲しいという主張があると当事者の態度が硬化し、紛争が長期化する傾向にあるように思われます。故人の通帳を精査して、使途不明金に関する指摘が出た場合も同様です。
3.遺言が有効
依頼者様(姉)からいただいた、こんなことになるなんて思わなかった、こんなことなら遺言を作っておけば良かったという言葉が印象的でした。
ご指摘のとおり、遺言があれば特に紛争化せず、弁護士にも依頼せず解決できた可能性の高い相続案件であったと思います。
少しでも相続トラブルが予想される場合には、遺言書の作成など、相続が発生する前の事前対策が非常に重要になります。
※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが、関係者のプライバシー保護等に配慮し、事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。