事案の経緯について
ご相談者様は、被相続人が亡くなる前から仕事の都合で海外に居住していたところ、被相続人の方が亡くなり、姉とご相談者様の2人が相続人となりました。被相続人の方の遺産は自宅不動産と預貯金がありましたが、預貯金の額は大きくなく、自宅不動産が遺産の価値のほとんどの割合を占めていました。
自宅不動産にはもともとご相談者様の姉が住んでおり、生前に不動産を自分がもらうという約束をしたと言ってご相談者様には何も相続させず、遺産分割協議を行うこと無く時間が経過しました。
ご相談者様は海外に居住しており、姉と遺産分割協議を行う時間をとることが難しかったことから、一時帰国された際に当事務所にご相談にいらっしゃり、遺産分割協議に関する代理人としてご依頼いただきました。
解決までの流れ
一般的に、遺産分割協議のご依頼を頂いた時、まずは遺産の内容を適切に判断するために財産調査をすることが多く、今回もまずは遺産の調査を行いました。
公正証書遺言の検索を公証役場に対して行ったり銀行に対して預金の取引履歴を取得の依頼をしたりする場合には、実印を押印した委任状や印鑑証明書、住民票を添付資料として求めてきます。
今回のケースはご相談者様が海外に居住していたことから、委任状に実印を捺印して印鑑証明書を添付する代わりに委任状にサインをしていただいた上で、在外公館でサイン証明(署名証明)を発行してもらいました。また、住民票の代わりに在留証明書も合わせて発行していただき、遺産を調査する際に資料として添付しました。
また、遺産分割調停申立後は、基本的には弁護士のみ出席すれば足りますので、ご相談者様は一度も裁判所に赴くこと無く、自宅を姉が取得してご相談者様が代償金を取得するという形で無事解決することができました。
弁護士からのアドバイス
相続人間が不仲である等の理由から遺産分割協議で争いが生じることは多々ありますが、他の相続人の方が遺産分割協議に全く応じなくなってしまった場合、それ以上任意の話し合いでは遺産分割協議を進めることができなくなってしまいます。
そのような状況を打破するためには裁判所に遺産分割調停を申し立てて第三者である調停委員の方を交えて話し合いをすることが有効な手段の1つです。
遺産分割協議がまとまらない大きな理由としては、相続人に適切な相続の知識が備わっていない、あるいは顔を合わせて協議を行うとつい感情的になってしまって話が進まなくなるというのが挙げられると思います。
遺産分割調停では、調停委員から相続の制度を丁寧に説明していただくことができますし、弁護士がつくことでご自身の希望される主張を法的に行うことができるようになりますので、遺産分割協議がまとまらない時には弁護士にご相談いただいた上でどのような方法を取るのが良いか一緒にご検討させていただくのが解決への近道だと思います。
また、本件のように海外に居住しているなどの特別な事情がある場合、手続きを進める上で通常は用いない書類が必要になったり、弁護士が代わりに裁判所に出席する必要が出てきますので、是非一度専門家にご相談されることをおすすめいたします。
※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが、関係者のプライバシー保護等に配慮し、事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。