最終更新日:2026年8月20日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 加藤貴紀

遺留分の計算は、大きく2つの作業に分けて考えると分かりやすいです。まず「計算のもとになる財産」を求め、そこに自分の遺留分割合を掛け合わせる、という流れです。

「計算のもとになる財産」とは、亡くなった時点で残っていた被相続人の財産に、一定の生前贈与を加え、そこから借金を差し引いた金額をいいます。一方の「遺留分割合」は、家族構成(誰が相続人になるか)によって決まる、最低限保障された取り分の割合のことです。

たとえば、計算のもとになる財産が8000万円、自分の遺留分割合が4分の1であれば、遺留分は2000万円となります。ただし、この金額をそのまま請求できるとは限りません。実際に相手へ請求できるのは、ここから自分がすでに受け取った遺産や生前贈与を差し引いた金額です。

遺留分とは

遺留分とは、亡くなった方(被相続人)の配偶者や子ども、親などの相続人に最低限保障された遺産の取り分です。

被相続人は、自分の財産を誰に残すか、遺言で自由に決められます。とはいえ、それを無制限に認めてしまうと、残された家族の生活が脅かされかねません。そこで法律は、配偶者や子ども、親などに対して、遺留分という形で最低限の取り分を確保しています。ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

たとえば「すべての財産を長男に渡す」という遺言があっても、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人がもらえる遺産がゼロになるわけではありません。

遺言や生前贈与によって取り分を奪われてしまった場合は、財産を多く受け取った人に対して、遺留分に足りない分のお金を請求できます。この不足分を「遺留分侵害額」、その請求を「遺留分侵害額請求」と呼びます。

遺留分の計算方法

遺留分は、大きく4つのステップで計算します。おおまかな流れは次のとおりです。

STEP1:遺留分の基礎となる財産を出す

STEP2:自分の遺留分割合を確認する

STEP3:基礎となる財産に遺留分割合を掛けて、自分の遺留分額を出す

STEP4:すでに受け取った分を差し引いて、請求できる金額を出す

順番に見ていきましょう。

STEP1 遺留分算定の基礎となる財産額の確定

はじめに、遺留分を計算する土台となる「基礎となる財産額」を確定させます。

計算式は次のとおりです。

【遺留分算定の基礎となる財産額】=【被相続人が残した財産額】+【生前贈与した財産の価額】−【被相続人の借金等の全額】

ここでいう「被相続人が残した財産」とは、被相続人の預貯金や不動産、株式といった、プラスの財産すべてを指します。なお、遺言によって遺贈された財産や死因贈与された財産も「被相続人が残した財産」に含まれます。金額は、被相続人が亡くなった時点の価値(時価)を基準に評価します。

次に、被相続人が生前に贈与した財産の価額を加えます。生前贈与とは、被相続人が生きている間に、自分の財産を無償で誰かへ譲ることをいいます。ただし、贈与のすべてを加えるわけではありません。次の3つのいずれかに当てはまるものだけを、基礎となる財産に算入します。

  1. 相続人以外への贈与:被相続人が亡くなる前1年間にしたもの
  2. 相続人への特別な贈与:被相続人が亡くなる前10年間にしたもの
  3. 遺留分を侵害すると当事者双方が知って行った贈与:時期を問わずすべて

②の「相続人への特別な贈与」は、「特別受益」とよばれるものです。いわば「遺産の前渡し」と評価される贈与で、結婚資金や住宅購入の援助、事業を始めるための開業資金などが典型例といえます。ただし、通常の生活費の援助や扶養の範囲内の支出は、特別受益にあたらないことが多いでしょう。

最後に、被相続人の借金や未払金などのマイナスの財産を、その全額差し引きます。

STEP2 遺留分の割合を確認

続いて、自分の遺留分割合を確認しましょう。割合は、次の式で求められます。

【自分の遺留分割合】=【総体的遺留分】×【自分の法定相続分】

総体的遺留分とは、相続人全体に保障される遺留分の割合のことです。原則は2分の1ですが、相続人が父母や祖父母(直系尊属)だけの場合に限り、3分の1となります。

法定相続分は、遺言がない場合に各相続人が受け取る基本の取り分です。この総体的遺留分に自分の法定相続分を掛けたものが、一人ひとりの遺留分割合であり、「個別的遺留分」とも呼ばれます。

法定相続分や個別的遺留分の割合は、次の表を参考にしてください。

相続人のパターン 総体的遺留分 法定相続分 個別的遺留分
配偶者のみ 1/2 1/1 1/2
子どものみ 1/1 1/2
配偶者と子ども 配偶者 1/2 1/4
子ども 1/2 1/4
配偶者と直系尊属 配偶者 2/3 1/3
直系尊属 1/3 1/6
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4 1/2
兄弟姉妹 1/4 なし
直系尊属のみ 1/3 1/1 1/3
兄弟姉妹のみ なし 1/1 なし

STEP3 「基礎となる財産額」に「遺留分の割合」を掛ける

「STEP1で出した遺留分の基礎となる財産」に、「STEP2で確認した自分の遺留分割合」を掛けます。

【自分の遺留分額】=【遺留分の基礎となる財産】×【自分の遺留分割合】

こうして算出された金額が、あなたに本来保障されている遺留分です。

ただし、これがそのまま請求できる金額になるわけではありません。すでに受け取った財産があれば、次のステップで差し引いていきます。

STEP4 受け取った金額を引く

最後に、自分の遺留分額から、遺言や生前贈与によってすでに被相続人から受け取っている財産を差し引きます。

【遺留分侵害額】=【自分の遺留分額】−【被相続人から受け取った財産】

ここで残った金額が、最終的な「遺留分侵害額」です。財産を多く受け取った相手に対して、この金額を請求できます。

計算の具体例

ここまでは言葉での説明が中心でしたので、ここからは実際に数字を当てはめて計算してみましょう。生前贈与の有無によって結果がどう変わるのか、3つのパターンに分けて見ていきます。

生前贈与がない場合の計算の具体例

具体例

  • 遺産:8000万円
  • 相続人:被相続人の妻と子ども1人
  • 遺言の内容:「すべての遺産を妻に相続させる」
  • 生前贈与:なし

この遺言どおりに妻がすべての遺産を相続すると、子どもの遺留分が侵害されてしまいます。そのため子どもは、遺留分を侵害している妻(子どもから見た母)に対して、遺留分侵害額請求ができます。

具体的な遺留分侵害額は、次のように計算します。

① STEP1 遺留分算定の基礎となる財産額の確定

債務も生前贈与もないため、相続財産の8000万円が、そのまま基礎となる財産額になります。

② STEP2 個別的遺留分割合を出す

子どもの遺留分割合=1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4です。

③ STEP3 基礎となる財産に割合を掛ける

子どもの遺留分額=8000万円×1/4=2000万円となります。

④ STEP4 受け取った分を引く

子どもは何も受け取っていないため、2000万円をそのまま妻(子どもから見た母)に請求できます。

相手に生前贈与がある場合の計算の具体例

具体例

  • 遺産:8000万円
  • 相続人:被相続人の妻と子ども1人
  • 遺言の内容:「すべての遺産を妻に相続させる」
  • 生前贈与:妻へ2000万円(被相続人の亡くなる前10年以内に行われ、特別受益にあたるもの)

先ほどと同じ家族構成で、妻が生前贈与を受けていたケースです。この場合も子どもの遺留分は侵害されているため、子どもから妻(子どもから見た母)へ遺留分侵害額請求を行います。

具体的な遺留分侵害額は、次のように計算します。

① STEP1 遺留分の基礎となる財産を出す

妻への生前贈与2000万円を加えるため、基礎となる財産は8000万円+2000万円=1億円になります。

② STEP2 個別的遺留分割合を出す

子どもの遺留分割合=1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4です。

③ STEP3 基礎となる財産に割合を掛ける

子どもの遺留分額=1億円×1/4=2500万円となります。

④ STEP4 受け取った分を引く

子どもは何も受け取っていないため、2500万円をそのまま妻に請求できます。

このように、相手が多くの生前贈与を受けていると、その分だけ基礎となる財産がふくらみます。結果として、子どもが請求できる金額も増えることになります。

自分に生前贈与がある場合の計算の具体例

具体例

  • 遺産:8000万円
  • 相続人:被相続人の妻と子ども1人
  • 遺言の内容:「すべての遺産を妻に相続させる」
  • 生前贈与:子どもへ2000万円(被相続人の亡くなる前10年以内に行われ、特別受益にあたるもの)

今度は逆に、遺留分を侵害されている子ども自身が、生前贈与を受けていたケースを見てみましょう。

具体的な遺留分侵害額は、次のように計算します。

① STEP1 遺留分の基礎となる財産を出す

子どもへの生前贈与2000万円を足すため、8000万円+2000万円=1億円になります。

② STEP2 個別的遺留分割合を出す

子どもの遺留分割合=1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4です。

③ STEP3 基礎となる財産に割合を掛ける

子どもの遺留分額=1億円×1/4=2500万円となります。

④ STEP4 受け取った分を引く

子どもはすでに生前贈与で2000万円を受け取っているため、この分を差し引きます。

したがって、請求できる金額は2500万円−2000万円=500万円となります。

このように、自分が被相続人から特別受益にあたる生前贈与を受けている場合は、その分だけ請求できる金額が少なくなります。

よくあるご質問

ここでは、遺留分の計算方法についてよくお寄せいただくご質問にお答えします。

死亡時の遺産以外に「遺留分算定の基礎となる財産額」に加える財産は?

被相続人が死亡時に残した遺産のほかに、次の3つに当てはまる財産を加えます。

  1. 被相続人が亡くなる1年前までに、他人へ贈与した財産
  2. 被相続人が亡くなる10年前までに、相続人へ贈与した特別受益にあたる財産(結婚資金や生活の援助など)
  3. 贈与をした被相続人と贈与を受けた人双方が、遺留分を侵害すると知ったうえで贈与した財産(時期の制限なし

生命保険は「遺留分算定の基礎となる財産額」に含まれる?

生命保険は、原則として遺留分算定の基礎となる財産額には含まれません。

生命保険金は、契約であらかじめ指定された受取人が受け取るお金です。亡くなった方から相続するのではなく、受取人が契約に基づいて自分の固有の権利として受け取るため、そもそも遺産(相続財産)には含まれません。したがって、遺留分の計算にも入れないのが原則です。

ただし、保険金が遺産に比べて極端に高額であるなど、他の相続人との不公平があまりに大きい場合には、例外的に計算へ含めることがあります。

また、受取人が被相続人自身に指定されている場合は、その保険金は被相続人のものとなるため、相続財産に含まれ、遺留分の計算対象になります。

生命保険は契約内容や金額によって判断が分かれやすい分野です。迷ったときは、弁護士に相談することをおすすめします。

死亡退職金は「遺留分算定の基礎となる財産額」に含まれる?

死亡退職金も、生命保険と同じく、原則として遺留分算定の基礎となる財産額には含まれません。

死亡退職金は、被相続人の勤務先の規定にしたがって、決められた受取人へ支払われます。受取人の多くは配偶者などの遺族です。これも被相続人から相続するものではなく、受取人が自分の権利として勤務先から受け取るお金のため、もともと遺産(相続財産)には含まれません。よって、遺留分の計算にも入れないのが原則です。

ただし、勤務先の規定の内容によっては、相続財産として扱われ、遺留分の計算に含まれる場合もあります。

こちらも判断が難しいため、気になる場合は弁護士に確認しておくと安心です。

死亡時の負債はどのように計算する?

遺留分算定の基礎となる財産額を計算するときは、被相続人が残した借金や未払金を全額差し引きます。

借金が多いほど基礎となる財産は小さくなり、その結果、遺留分も少なくなります。

葬儀費用はどのように計算する?

葬儀費用は、原則として遺留分の計算では差し引きません。

葬儀費用は被相続人が亡くなった後に発生する費用であり、被相続人自身が負っていた借金とは性質が異なるからです。

そのため、葬儀費用を理由に遺留分が減ることは、基本的にないと考えてよいでしょう。

相手が遺産を開示しない場合、どうすればよい?

相手が財産を教えてくれないときも、あきらめる必要はありません。自分で調べる方法や、裁判所を使う方法があります。

まずは、自分で調べられる範囲を確認しましょう。被相続人の口座があった銀行などには、相続人として残高証明書や取引履歴の発行を請求できます。

また、被相続人が所有していた不動産の一覧を調べる際は、法務局(登記所)で「所有不動産記録証明書」を取り寄せられます。これにより全国の不動産を一括して確認できます。市区町村の役所でも、固定資産税の課税記録を基にした、その市町村にある不動産の一覧(名寄帳)を取得することが可能です。

さらに、裁判所を通じて、相手に財産資料の提出を求めたり、不動産の価値を専門家に評価してもらったりすることも可能です。

なお、財産の全体像がつかめていなくても、まずは「遺留分を請求します」という意思を相手へ伝えておくことが大切です。というのも、遺留分の請求には期限が定められています。「相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年」または「相続開始から10年」のどちらか早いほうが過ぎるまでに請求する意思を伝えないと、請求する権利そのものが消滅してしまいます。

この意思表示は、後から証拠を残せるよう、内容証明郵便で行うのが一般的です。

まとめ:遺留分の計算に迷ったら弁護士へ

遺留分の計算では、現在残っている財産だけを確認すればよいわけではありません。

過去の贈与をどこまでさかのぼるのか、借金や生命保険をどう扱うのか、不動産をどう評価するのかなど、専門的な判断を求められる場面が数多くあります。

しかも、遺留分の請求には期限が定められています。「相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年」または「相続開始から10年」のどちらか早いほうが過ぎると、請求する権利そのものが消滅してしまいます。

正しい金額を算出し、期限内に確実に請求するためにも、できるだけ早い段階で弁護士へご相談ください。

よつば総合法律事務所は、数多くの相続のご相談をお受けしてきました。遺留分でお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 加藤貴紀

名古屋事務所所長。相続に関連する問題に幅広く対応しています。税理士や司法書士などの他士業と連携することでワンストップで問題解決にあたります。愛知県弁護士会所属(登録番号52907)。