相続人全員の実印を押した届け及び印鑑証明書を銀行に出す方法が一般的ですが他にも方法はあります。
1. 銀行預金についての一般論
故人の銀行口座については、死亡後近い時期に引き出しをすることができなくなります。銀行は故人の死亡を知った時点で口座を凍結し、預金口座からのお金の引き出しをすることを拒否します。
2. 銀行への書類の提出
銀行によって多少書式は違いますが、相続人全員が署名し、実印が押してある届けを提出することにより、銀行は届けにより指定された通りに預金を処理します。また、故人の出生から死亡までの戸籍と相続人の関係がわかる書類をそろえて提出する必要があります(コピーでも大丈夫な銀行と原本の提出が必要な銀行があります。)。
この戸籍の収集は結構難しく、初めての方だととても難しい作業になります。銀行窓口では1枚でも戸籍が足りないと預金の払い戻しには応じません。
故人が生まれた市町村や本籍の市町村、相続人が住んでいる市町村などに問い合わせて戸籍を収集します。
不動産登記などもする必要がある場合にはまとめて司法書士に戸籍の収集を依頼した方が早いかもしれません。
3. 銀行は法律違反???
かつては、各相続人は遺産分割をしなくとも相続分に従って預貯金を払い戻すことができました。
しかし、平成28年12月19日、最高裁は預貯金についても遺産分割の対象となるとして、遺産分割を経ていない場合には、各相続人は、預貯金を払い戻すことができなくなりました。
4. 遺産分割前の払戻し
令和元年7月から遺産分割前の預貯金の払戻し制度が創設されました。
家庭裁判所の判断により払戻しができるものと、家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度があります。
5. 過去の通帳の履歴について
他方、過去の通帳の履歴については、各相続人が単独で開示を求めることができます。
故人と一緒に住んでいなかった場合などは、通帳からの入出金や現在の残高がわからないことがありますが、相続人であることがわかる戸籍を提出すれば、銀行は過去の通帳の履歴の開示には応じます。(過去どれくらいまでさかのぼることができるかどうか及び手数料は各銀行によって異なりますので実際に問い合わせをしてみることが必要です。)
銀行が「10年分しか開示しない」と言っていても実際はもっと過去の資料も銀行にありますので、窓口で粘れば開示はされます。銀行の「10年分しか開示しない」という言葉の意味は「原則として10年分の開示をすることに銀行で決めた」というだけの意味しかありません。
(監修者:弁護士 大澤一郎)