原則として控除はできません。

(回答:弁護士 大澤一郎)

遺留分の額を算定するにあたっては、財産から借金を控除して、遺留分減殺請求の対象となるべき額を確定します。

ここで、被相続人が有していた借金(債務)については、原則として控除が可能です。そこで、主たる債務ではなく保証債務も控除して算定できるかどうかが問題となります。

原則

保証債務は債務として控除できません。

保証債務(連帯保証債務)は、保証人において将来現実にその債務を履行するかどうか不確実であり、実際に保証人が支払ったとしても主たる債務者に対して求償(請求)をすることも可能です。そのため、原則として債務として控除はできません。

おおざっぱにいうと「現実的に保証人としての責任を負うかどうかわからないので債務として控除しません」ということです。

保証人・連帯保証人の責任は、あくまで、元々借入をした本人が支払わない場合の責任です。連帯保証人という立場であったとしても無条件に責任を負うわけではありません。保証人の責任というのは実際に現実化するかどうかわからない責任です。まだ現実化していない責任についてまで控除をするというのはおかしいというのがその理屈です。

例外

主たる借主が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行した金額分を借主に請求(求償)しても返済がされる見通しがないような場合には、債務として控除されるとされています。

おおざっぱに言うと、「保証人とは言っても、実際に借りている人と同じ位の責任となっていますので控除します」ということです。例えば、お金を借りた本人が既に破産している場合、お金を借りた本人が既に行方不明となっているような場合には、保証人に対して全額の請求がくることはほぼ確実であると言えます。そのような場合には、保証人の責任=借りた本人の責任となります。

以上のように、保証債務が民法第1029条の「債務」として控除の対象になるかどうかは原則否定、例外肯定という結論になります(なお、「保証人」であっても「連帯保証人」であっても結論は同じです)。

保証債務と遺留分の関係は、弁護士であっても知らない弁護士がたまにいます。遺留分に関する法律は極めて難しい理論内容となっていますので、相続に詳しい弁護士に対して問い合わせをする方がいいでしょう。

参考判例 東京高等裁判所平成8年11月7日判決

(文責:弁護士 大澤一郎)