「特別の寄与」により故人の遺産が維持又は増加したことが必要です。
(回答:弁護士 大澤一郎)
「特別の寄与」とは
寄与分が認められるために必要な「特別の寄与」とはいくつかの場合があると言われています。
家業従事型
家業である自営業や農業などに従事することによる寄与です。特別の貢献、無償性、継続性、専従性といった条件を満たすことが必要です。
ただし、無償にて家業を手伝っているということは実際には少ないため、「家業に従事していたのだから寄与分が認められるべきだ」という主張は通りにくいです。家業を継ぐ場合には、公正証書遺言の作成や生前贈与の規定の活用をすることの方が確実かつ安全と言えるでしょう。
金銭等出資型
不動産の購入資金の援助や医療費や施設入所費の負担などの場合です。契約書やお金の流れがわかる資料(銀行の通帳・領収書等)の資料をきちんと保管しておくことが大切です。
療養看護型
相続人が故人の療養看護を行った場合です。療養看護の必要性、特別の貢献、無償性、継続性、専従性と言った条件を満たすことが必要です。
療養看護は長期間に わたることが多く、また、実際に経験をした人と経験をしていない人の認識の差が大きいことから、寄与分をめぐるトラブルの中で一番こじれやすいタイプです。
療養看護を受ける側からすると、後日のトラブルを防止するために公正証書遺言を作成してその中で療養看護を受けた分を評価した遺産分割方法の指定をしておくことが望ましいと言えます。
扶養型
相続人が故人の扶養を行ったために故人の生活費の支出を免れることができた場合などです。具体的には、毎月仕送りをしていた、同居して衣食住の面倒を見ていたというような場合です。
扶養の必要性、特別の貢献、無償性、継続性と言った条件を満たすことが必要です。
財産管理型
故人の財産を管理していた場合です。財産管理の必要性、特別の貢献、無償性、継続性の要件を満たす必要があります。
故人の賃貸物件を多数管理していたような場合には寄与分の証明をすることが比較的簡単な場合が多いです。
まとめ
寄与分を主張する場合には、いずれの場合においても「特別の寄与」であることが必要です。親子間、親戚間で通常行う程度の貢献では寄与分の主張は認められないことが多いです。
寄与分が認められるハードルは以外と高いので、不必要なトラブルを発生させることがないように注意したいものです。
(文責:弁護士 大澤一郎)