原則として土地・建物共になりません。

(回答:弁護士 大澤一郎)

無償使用の権利関係

遺産の無償使用の典型的なケースは父親の土地上に子供が建物を建てているようなケースです。土地の使用貸借契約がある場合、土地の評価10%~30%程度低下すると一般的には考えられています。

一般に、相続に関する無償使用で多いケースは、土地の無償使用・建物の無償使用です。

以下、土地の使用貸借契約、土地の地代相当額、建物の使用貸借契約、建物の賃料相当額に分けて検討します。

土地の無償使用と特別受益について

土地の無償使用は特別受益となることが一般的です。ただし、実際にはその土地を使用している相続人が相続するケースが圧倒的ですので、実際には特別受益の問題として現実化しないことが多いです。

つまり、使用貸借契約に基づく使用借権の特別受益分+使用貸借契約が設定されたことによる土地の減価分=土地の時価、となり、その土地を今まで使っていた相続人が利用し続けるため、特別受益として評価してもしなくても結論が同一となるからです。

地代相当額が特別受益となるか

地代相当額は特別受益とはならないと考えられています。

建物の無償使用と特別受益について

建物の使用貸借契約に伴う使用借権は一般には特別受益とはならないと考えられています。また、仮に使用借権が特別受益になるとしても、故人の持ち戻し免除の意思表示があると考えるのが一般的です。

建物の賃借料相当額が特別受益となるか。

建物の賃借料相当額は特別受益とはならないと考えられています。

まとめ

  1. 土地の使用貸借契約自体
    結果的には特別受益として評価しないことが一般的です。
  2. 土地の地代相当額
    特別受益の問題とはなりません。
  3. 建物の使用貸借契約自体
    結果的には特別受益として評価しないことが一般的です。
  4. 建物の賃料相当額
    特別受益の問題とはなりません。

参考判例

  • 東京地方裁判所平成15年11月17日判決

(文責:弁護士 大澤一郎)

コラム:特別受益でもめないためには

公正証書遺言の作成をしておけば、遺産をめぐる紛争でもめる確率は極端に低くなります。そして、公正証書遺言の中に、特別受益に該当する可能性がありそうな財産については、持ち戻し免除をする旨の意思表示を記載しておけば、もめる確率はより低くなります。遺言書を作成する場合には、今ある遺産をわけるだけではなく、過去の生前贈与や賃貸借契約の関係、使用貸借契約の関係も併せて検討することが必要です。