基本的に全て手で書くこと、書く内容は明確にしてください。
1. 自筆証書遺言でも問題なし
自筆証書遺言は、公正証書遺言と比べて、有効無効の争いを生みやすいのですが、しっかり作成しておけば、問題ありません。
2. 自筆証書遺言は自書が必要
手書きで作成する自筆証書遺言は、その全文や日付や名前を含めて自書(手書き)することが必要です(民法第968条1項)。自書しなかった場合、その遺言は無効となってしまうので、ご注意ください。
ただし、財産目録については自書することまでは求められておりません(民法第9682項)。
尚、財産目録については、全ての頁に署名押印する必要があります(両面印刷にした場合は、両面に必要となります)ので、注意しましょう。
3. 内容は明確に!
自筆証書遺言の内容は、明確にしてください。
公正証書遺言の場合、遺言書自体は公証人が作成するため、内容が明確であることが多いです。しかし、自筆証書遺言の場合、自分では意思を明確にしたと思っていても実際は明確ではないとなってしまうこともあります。
例えば、「遺産の内容は、相続人3人でよく話し合うこと」という遺言内容では、何も決めていないのと同じです。「遺産分割は弁護士に一任する」という内容を見かけることもありますが、明確とはいえません。
内容を明確にするために重要なことは、
誰に どの財産を どれぐらい
渡すのかを明確にする必要があります。明確にという意味は、第三者から見ても内容が理解できるということです。
(1) 誰に
遺言には、財産を取得させたい方の氏名を書きましょう。
「お母さん」ではなく、「四葉花子」という氏名を書くべきです。また、第三者から見てもどこの四葉花子か分かるように
妻・四葉花子(昭和40年4月1日生)
というように特定したほうがいいでしょう。
遺言を作成する方(夫)の妻で、昭和40年4月1日生まれの四葉花子という名前の方は、世界に1人だけだからです。
(2) どの財産を
渡したい財産は明確に種類を書きましょう。
例えば、「お金は、妻・四葉花子に」では、現金か預貯金を示しているのか明確ではありません。預貯金を現金と区別して内容を明確化しましょう。
「株」についても、どの会社の株なのか、明確にする必要があります。特に経営者の方の場合、自社株式なのか、上場株式なのか、はっきりさせる必要があります。
不動産についても、「自宅」ではなく、不動産の所在や地番や家屋番号を書いて特定しましょう。土地であれば、所在、地番、地目、地積を書いて、建物であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を書いて内容を明確にしましょう。
(3) どれぐらい
取得させる財産について、取得させる量も明確にしましょう。
「一切の預貯金については、妻、娘、息子に分ける」では、相続人で三等分するのか、法定相続割合に従って分けるのか、分かりません。
一切の預貯金については、妻・四葉花子(昭和40年4月1日生)に2分の1の割合、長女・四葉花江子(平成元年4月1日生)に4分の1の割合、長男・四葉三太郎(平成3年4月1日生)に4分の1の割合にて、それぞれ相続させる。
というように明確にしましょう。
(4) まとめ
四葉太郎さんが奥さんの四葉花子さんに、自宅である土地建物を渡したい場合の具体例
土地 | |
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所在 | 柏市四葉 |
地番 | 123番4 |
地目 | 宅地 |
地積 | 123.45㎡ |
建物 | |
所在 | 柏市四葉 123番地4 |
家屋番号 | 123番4 |
種類 | 居宅 |
構造 | 木造スレート葺2階建 |
床面積 | 1階 89.10㎡ |
2階 89.10㎡ |
4. 特定しない特定方法?
明確のために、財産については明確に記載すると書きましたが、逆に特定しない特定方法もあります。
「一切の」という言葉を使えば、個別に特定せずとも特定していることになります。
例えば、既に【3 内容は明確に!】の【(3) どれぐらい】の具体例で記載してありますが、「一切の預貯金」と書けば、○○銀行と特定する必要はありません。
(監修者:弁護士 大澤一郎)