最終更新日:2026年8月24日
遺留分を請求する書面に、決まった形式はありません。
必要な事項を押さえたうえで、配達証明付きの内容証明郵便で送付するのが一般的です。
この記事では、文例(参考のひな型)と、書面を書くときのポイントを弁護士がわかりやすく紹介します。
遺留分とは
遺留分とは、亡くなった人(被相続人)の遺産のうち、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分のことです。遺留分を持つのは、亡くなった人の配偶者や子ども、親などです。兄弟姉妹に遺留分はありません。
たとえば、遺言に「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていても、ほかの相続人の取り分がゼロになるわけではありません。残された配偶者や子どもには、最低限の取り分が法律で確保されているからです。
上記の人たちが遺留分より少ない遺産しか受け取れなかったときは、遺言や生前贈与で被相続人の財産を多く受け取った人に、その不足分をお金で支払うよう請求できます。これを遺留分侵害額請求といいます。

遺留分侵害額請求の文例のひな型
遺留分侵害額請求書を作成するときは、次のような文章を書けば十分です。
遺留分侵害額請求書
令和〇年〇月〇日
〒〇〇〇-〇〇〇〇
〇〇県〇〇市〇〇〇丁目〇番〇号
〇〇 〇〇 殿
〒〇〇〇-〇〇〇〇
〇〇県〇〇市〇〇〇丁目〇番〇号
〇〇 〇〇 印
被相続人〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)は、公証人〇〇〇〇が作成した公正証書遺言(令和〇年第〇〇号)で、長男である貴殿に対し、唯一の遺産である〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地所在の土地・建物を相続させました。
しかし、私は、被相続人の長女として、遺産の4分の1について遺留分を有しています。
上記遺言は、私の遺留分を侵害しておりますので、私は、貴殿に対して遺留分侵害額請求を行います。つきましては、遺留分侵害額として〇〇〇〇万円(本件土地・建物の評価額の4分の1相当額)を、本書到達後2週間以内に、下記振込口座にお支払いください。
記
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 〇〇 〇〇
※相続人が「長男」と「長女」の2人のみ(法定相続分が各2分の1)であるケースを想定した文例です。
書面の各パートの意味は、次のとおりです。
- ① 作成日:いちばん上に、書面を送る日を書きます。
- ② 相手方:「殿」をつけて、請求する相手の住所と氏名を書きます。遺言や贈与で財産を受け取った本人です。
- ③ 自分:自分の住所と氏名を書き、印鑑を押します。
- ④ 内容(本文):誰の相続か、どの遺言か、自分の遺留分の割合、そして「遺留分侵害額請求を行う」ことを書きます。
- ⑤ 振込先:「記」から下に、支払ってもらう銀行口座を書きます。金額を入れて請求するときに使います。
遺産の全体や金額がまだわからないときは、金額と振込先を書かず、「遺留分侵害額請求を行います」という意思だけを伝える形でもかまいません。まずは期限内に請求の意思を示すことを優先しましょう。
なお、これはあくまで参考の文例です。名前・日付・続柄などは自分の状況に置き換え、書く前に内容が合っているかを確認してください。

文章作成のポイント
遺留分侵害額請求書を作成する際は、後から「請求した、していない」というトラブルを防ぐことが大切です。「遺留分侵害額請求をする」という意思を相手に伝えたことを、後から証明できる形で残しておきましょう。
必要事項を記載する
書面には、「誰が」「誰に」「どの遺言や贈与に対して請求するのか」をはっきり書きます。
最低限、次の5つがそろっていれば問題ありません。
- ① 亡くなった人の氏名と、亡くなった日
- ② 自分の立場。長女・長男など、亡くなった人との関係
- ③ どの遺言や贈与に対して請求するか
- ④ 「遺留分侵害額請求を行う」という意思
- ⑤ 送る日と、自分の住所・氏名
これらが記載されていれば、金額まで細かく計算して書く必要はありません。
請求の相手を間違えない
遺留分侵害額請求をするときは、請求書を送る相手を間違えないよう注意しましょう。
請求の相手方は、遺言や生前贈与によって財産を多く受け取り、あなたの遺留分を侵害している人です。法律上は、遺言で財産を受け取った人を「受遺者」(相続人に特定の財産を「相続させる」と遺言された場合も含みます)、生前贈与を受けた人を「受贈者」といいます。
遺言の内容を執行する「遺言執行者」がいたとしても、請求の通知は直接、受遺者や受贈者本人に宛てて出す必要があります。
請求の相手方が複数いる可能性があるときは、誰に通知すべきかを慎重に確認する必要があります。
この点、時効が迫っている場合は、心当たりのある相手への通知を急ぐ必要があります。ただし、法律上、誰にどの順番でいくら請求できるかは決まっています。慌てて間違った請求をしてトラブルにならないよう、早急に弁護士に相談することをお勧めします。
内容証明郵便で送る
遺留分侵害額請求書は、配達証明付きの内容証明郵便で送りましょう。
内容証明郵便とは、いつ・どんな内容の文書を送ったかを、郵便局が証明してくれる仕組みです。配達証明を付ければ、相手に届いた日付も記録に残ります。これにより、「そのような書類は受け取っていない」と争われるリスクを減らせます。
感情的な表現は避ける
遺留分侵害額請求書は、気持ちをぶつけるための手紙ではありません。
相手への不満や恨み言は書かず、請求の趣旨だけを簡潔に伝えましょう。淡々とした落ち着いた文面のほうが、その後の話し合いもスムーズに進みやすくなります。

よくあるご質問
ここでは、遺留分侵害額請求書について、特に迷いやすい点をまとめました。
遺留分の請求書はいつまでに送付すればよい?
遺留分侵害額請求書は、できるだけ早く送ってください。
遺留分の請求には期限があります。相続が始まったことと、自分の取り分が侵害されたことを知ったときから1年です。この1年を過ぎると、請求できなくなります。また、相続が始まってから10年が経過した場合も、同様に請求できなくなります。
期限はとても短いため、心当たりがあれば早めに動き出しましょう。
遺留分の請求書は誰に送付すればよい?
遺言や贈与によって、亡くなった人から財産を多く受け取った人に送ります。
相手は、ほかの相続人とはかぎりません。相続人以外の第三者が亡くなった人から財産を受け取っていれば、その人が相手になることもあります。
誰に送るべきか迷うときや、相手方が複数いて判断が難しいときは、早めに弁護士へ確認することをおすすめします。
遺留分の請求は口頭やメールでもよい?
法律上、遺留分侵害額請求の方法に決まった形式はないため、口頭やメールでも請求自体は可能です。
ただし、それでは「いつ・どんな内容を請求したか」を後から証明するのが難しくなります。万が一裁判になったとき、証拠が残っていないと不利になりかねません。
だからこそ、確実に記録が残る配達証明付きの内容証明郵便を使うのが、実務では一般的です。
請求書に請求金額を記載する必要はある?
最初の段階では、具体的な金額を書く必要はありません。
「遺留分を侵害されているので、その分のお金を請求します」と伝えれば十分です。
むしろ、財産の全体像がわからないうちに金額を書くのは避けたほうが無難です。先に低い金額を書いてしまうと、あとで財産が想定より多いとわかった場合に、交渉上不利になるおそれがあるためです。具体的な金額は、財産を調べたうえで後からでも計算できます。
まとめ:遺留分の請求書の記載内容に悩んだら弁護士へ
遺留分の請求は、「期限内に」「正しい相手へ」「確実な方法で」意思を伝えることが何より大切です。
ただ、内容証明郵便の作成や、「誰に」「いくら」請求できるかの判断、実際にお金を受け取るための話し合いには、専門的な知識が必要になる場面もあります。
書き方に不安があるときや、相手ともめそうなときは、無理にお一人で進めず、よつば総合法律事務所の弁護士にご相談ください。







