空室率・修繕費用や過去の不動産の利用状況などの事実を適切に証明する必要があります。

(回答:弁護士 大澤一郎)

収益物件の鑑定について

収益物件(賃貸マンション、オフィスビル)の不動産価格の評価については、賃料収入や修繕費を考慮した収益還元法を基本として判断されることが多いです。

その場合、賃料収入や修繕費について正しい事実関係を鑑定人に伝えておく必要があります。

賃料収入について

当然、現在の入居率や賃料等については鑑定の基礎資料として準備することになると思います。

ただし、将来に多数空室が出る可能性があることや、現在一時的に空室率が高いことなどは当事者が指摘しないと鑑定人は把握することができません。

また、過去は空室率が高かったが最近空室率が減ってきているというような事情も当事者が指摘しないと鑑定人は把握することができません。

修繕費について

通常かかる修繕費については問題ありませんが、物件の今までの管理状況からして追加で特別にかかる可能性がある修繕費については、指摘をしないと鑑定人は理解できません。

個別の事情については鑑定人にきちんと証拠と共に指摘する必要があります。

土壌汚染リスクについて

工場の種類などによっては、土地の土壌汚染リスクをきちんと指摘しておくことも重要です。

化学物質を使う工場やクリーニング店の跡地などでは、化学物質による土壌汚染のリスクがあります。現在、化学工場などとして使用している場合は鑑定人は気付くかもしれませんが、過去に化学工場として使用されていただけの場合、鑑定人は土壌汚染リスクに気付かない可能性もあります。

土壌汚染のリスクは土壌調査費用、土壌改良費用など数千万円単位でお金がかかることもある重大なリスクですので注意が必要です。

鑑定人について

不動産鑑定士に直接依頼をする場合、不動産鑑定士によって得意分野が異なっていることもあります。できるだけその分野に精通した鑑定人に依頼することがよいでしょう。

結論

鑑定人が鑑定をするとしても、その評価の前提となる事実関係については鑑定人は全てを把握することはできません。

これは、直接不動産鑑定士に鑑定を依頼した場合であっても、裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定であっても事情は同様です。

過去の不動産をめぐる事実関係については、鑑定人に適切に伝えることが望ましいでしょう。

(文責:弁護士 大澤一郎)