「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合」「特別受益に該当する場合」には遺留分算定の基礎に含みます。

故人が死亡する1年以上前の贈与は「遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合」「相続開始前10年間になされた特別受益に該当する場合」には遺留分算定の基礎に含めて計算をします。

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたというためには、贈与の当時において「その贈与が遺留分を侵害するとの認識があること」及び「将来において故人の財産が増加しないという予見があること」の2つが必要と言われています。

(1)遺留分侵害の認識について

法律的な知識までは必要とされず、客観的な事実関係として遺留分を侵害していることを知っていればよいとされています。

(2)故人の財産が増加しないという予見について

遺留分権利者を侵害するかどうかは贈与の時点での判断となるため、将来贈与者の財産が増加することも考えられます。

そのため、全財産に対する贈与財産の割合のみではなく、贈与の時期・故人の職業・年齢・健康状態などを総合考慮して、将来の財産が増加するかどうかを判断します。

(3)遺留分を請求する側で、上記の2点を証明することにより始めて、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合に該当します。

(4)なお、上記は一般的な見解であり、他の見解も有力に主張されています。

そのため、「損害を加えることを知って贈与した」かどうかの判断は実際にはとても難しいものとなります。請求する側では、損害を加えることを知って贈与したと思われる財産については一覧表を作成し、相手の回答をまずは求めるという方法が一般にはよいと思われます。

請求された側では、「損害を加えることを知って贈与した」旨の証明がないとして争う方法がよいと思われます。真偽不明の場合には、請求された側がこの争点については勝ちます。

特別受益に該当する場合

相続人に対する贈与で相続開始前10年間になされた特別受益に該当するような場合には、故人の死亡1年以上前の贈与であったとしても遺留分算定の基礎に含めて判断します。

参考判例

  • 大審院 昭和4年6月22日判決
  • 大審院 昭和9年9月15日判決
  • 大審院 昭和10年11月29日判決

(監修者:弁護士 大澤一郎)