代襲相続人が相続人になる前の生前贈与は持ち戻しの対象とはなりません(遺留分算定の考慮要素にはなりません)。他方、代襲相続人が相続人になった後の生前贈与は持ち戻しの対象となります(遺留分算定の考慮要素になります)。
(回答:弁護士 大澤一郎)
代襲相続人とは
本来の相続人が死亡などの理由で相続人でなくなった場合に代わりに相続人となる人です。具体的には、故人の子供が死んだ場合の孫などがあたります。
故人の子供が死亡する前の孫への贈与
これは、相続人でない孫への贈与となりますので、特別受益の規定が適用されることはありません。そのため、(1)相続開始1年以内の贈与であること、又は、(2)遺留分権利者を害することを知ってなした贈与であることとの条件を満たした場合のみ、遺留分算定の考慮要素となります。
なお、相続開始1年以内の贈与は比較的明確でわかりやすいですが、遺留分権利者を害することを知ってなした贈与というためにはかなり厳格な条件が必要となりますので注意が必要です。
故人の子供が死亡した後の孫への贈与
これは、相続人である孫への贈与となりますので、特別受益の規定が適用されることになります。(1)特別受益の規定に該当すること、(2)相続開始1年以内の贈与であること、(3)遺留分権利者を害することを知ってなした贈与であることのいずれかの条件を満たした場合には遺留分算定の考慮要素となります。
なお、特別受益とは(1)遺贈、(2)婚姻又は養子縁組のための贈与、(3)生計の資本としての贈与の3つのパターンがあります。特別受益に該当する贈与かどうかは、かなり事実関係によって判断が異なりますので、お互いが自分の主張を裏付ける証拠を集めて丁寧に証明してく必要があります。
まとめ
故人の子供が死亡した時期と贈与がなされた時期を比較して、時期によって遺留分の基礎に含むかどうかの判断が別れるということになります。
なお、特別受益に該当するかどうかの判断は非常に微妙な判断となることもありますので注意が必要です。
※上記は一般的な多数意見や裁判例にしたがった見解です。故人の子供が死亡した時期と贈与がなされた時期の前後関係を問わず、全ての場合に特別受益として考慮してもよいという考え方もあります。実際の調停・裁判では、双方がお互いの主張をして、その結果、話し合いで解決することも多いと言えます。
(文責:弁護士 大澤一郎)