最終更新日:2026年6月24日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 戸嶋瑞樹

不動産の遺産分割では、①不動産の取得者と②不動産の評価方法に注意する必要があります。

この記事では、不動産が絡む相続で悩んでいる方に向けて、不動産の取得者をどのように決めるかという点や、不動産をいくらと評価するかという点を解説します。

相続における不動産の問題は慎重な検討が必要です。悩んだら、相続に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。

不動産の遺産分割の4つの方法

不動産の遺産分割方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。

各方法のメリット・デメリット

現物分割

現物分割とは、相続分に従って不動産を物理的に分割する方法です。

現物分割のメリット

① 遺産を処分する必要がない

売却などの手続きを取ることなく、不動産をそのままの形で相続できます。

② 分割された不動産を自由に利用することができる

分割された不動産は各相続人の単独所有になるため、自分だけの判断で建物を建てたり賃貸したりできます。

現物分割のデメリット

① 建物を現物分割することは難しい

土地と異なり、建物は物理的な分割に適しません。

② 実用性に乏しい土地の発生

現物分割では、分割後の土地の価格に基づき公平となるように分割されます。

そのため、元々の土地があまり大きくない場合などは、分割後の土地が実用性に乏しい土地となってしまうことがあります。

③ 手続きが複雑

土地の価格評価や分割後の登記手続の資料収集、隣地との境界確認など様々な事前準備が必要になります。

換価分割

換価分割とは、不動産を売却して得た金銭を相続分に従って分割する方法です。相続人全員の合意による「任意売却」と裁判所の決定による「競売」の2種類があります。

換価分割のメリット

① 金額をめぐる紛争が生じにくい

売却で得た金銭を分割するため、計算が簡単で争いになるリスクが低いです。

また、相続人全員の意見が高値での売却で一致するため、売却方針をめぐって意見がわかれることが比較的少ないです。

② 維持費や税金の負担がなくなる

換価することで不動産を手放すことになるため、維持管理費や固定資産税を負担する必要がなくなります。

換価分割のデメリット

① 不動産を手放すことになる

換価分割された不動産は手放すことになります。相続人が不動産に居住し続けることを望んでいるのなら、換価分割は避けるべきでしょう。

② 競売に移行する可能性

任意売却について相続人全員の同意が得られないと、最終的には競売になってしまうことがあります。競売をすると、売却価格が安くなり、解決までにより時間がかかることが多いです。

③ 手続き費用がかかる

不動産売却には、仲介手数料や譲渡所得税、登録免許税といった費用がかかります。不動産価格が高くなればなるほど、費用は増額します。

代償分割

代償分割とは、他の相続人に対し代償金を支払うことで、相続人の一人が不動産を単独で相続する分割方法のことをいいます。

代償分割のメリット

① 不動産を使用し続けられる

対象不動産に居住している相続人はそのまま居住を続けられます。農地、工場、事務所などの事業用不動産の場合には、従前の事業を継続できます。

② 現物分割に適さない不動産も対象となる

建物など物理的な分割が難しい不動産についても、公平に分割することができます。

③ 不動産の使用についての争いを回避できる

不動産は単独所有になることから、分割後に使用方法で争いになることはありません。

代償分割のデメリット

① 多額の現預金が必要になる

代償金は不動産の価値に応じて決まるため、一般的には高額になることが多いです。

また、代償金の支払いは一括払いが原則です。所有権を取得する相続人は、手元に多額の現預金を用意しておく必要があります。

② 不動産評価額が争いになりやすい

単独で相続する相続人としてはなるべく不動産の価格を抑えたいと考えます。一方で、代償金を受け取る相続人はなるべく不動産の価格を吊り上げたいと考えます。

そのため、相続人の間で評価額についての対立が生じやすいです。

共有分割

共有分割とは、相続分の割合で不動産を共有する分割方法です。実務上は最終手段と考えられていることが多く、共有分割をする場合には慎重な検討が必要です。

共有分割のメリット

① 遺産分割の最終手段

現物分割、換価分割、代償分割のどの方法によっても相続人の合意が得られないとき、最終手段として用いられます。

② 公平に見える解決ができる

たとえば、相続人が2名(法定相続分2分の1)の場合、不動産を各2分の1の共有にすれば、公平に見える解決となります。

共有分割のデメリット

① 所有についての最終的な争いは解決しない

共有分割では共有状態を解消できません。相続人(共有者)の間で争いが生じると、裁判に発展するなどさらに手間がかかります。

② 不動産の売却や有効活用が進まなくなる

共有者一人の判断では共有不動産を売却できません。賃貸などの有効活用も共有者一人の判断ではできないことが多いです。

不動産の遺産分割手続きの流れ

相続人で協議

遺産の具体的な分け方について相続人全員で話し合うことを、遺産分割協議と呼びます。

遺産分割協議で話がまとまったときには、遺産分割協議書を作成します。協議内容を文書にすることは、遺産争いの蒸し返しを防止するために重要な手続きです。

協議書を作成したあとは、売却代金等の分配手続きや不動産の登記手続きを進めます。

合意できない場合は裁判所を利用して解決

遺産分割調停

遺産分割協議で話がまとまらないときに行うのが、遺産分割調停です。遺産分割調停は、裁判所が仲介役として入り、相続人間で交渉を進める方法です。

複雑に絡み合った法的問題を整理しながら話し合いを進められるため、相続人間の感情的な対立を避けることができます。

調停は1年以内に終了することが多いですが、複雑な事案だと数年かかることもあります。

遺産分割審判

遺産分割調停でも話がつかない場合、遺産分割審判に移行します。遺産分割審判は、調停で提出された資料を参考に、裁判所が強制的に分割方法を決める手続きです。

審判は裁判の判決と同一の効力を持ち、審判内容に従わない者に対しては強制執行ができます。

審判内容に納得がいかないときには、異議申し立てをすることが可能です。

遺産分割調停や審判の手続きの流れ

遺産分割調停・審判は次のような流れで進みます。

① 相続人の範囲の確定

戸籍謄本などの資料を確認しながら、誰が相続人なのかを確定します。

民法上定められた法定相続人は、配偶者、子、父母、兄弟姉妹です。養子も子に含まれます。子がすでに亡くなっているときは孫が、兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは甥や姪が相続人(代襲相続人)になります。

② 遺言の有無と有効性を確認

遺言書があるときには、遺言書の内容どおりに遺産が分割されるため、遺産分割手続きは原則として行いません。「遺言書がない場合」や「遺言書が無効である場合」には、遺産分割の手続きを進めます。

「無理矢理遺言書を書かされた」「遺言書の作成時、作成者の判断能力は低下していた」などの事情があって争いがある場合、調停ではなく「遺言無効確認訴訟」を提起して有効性を争うことになります。遺言の有効性が確定しない限り、遺産分割は進行しません。

③ 遺産の範囲の確定

遺産分割の対象となるのは、亡くなった時点で存在し、かつ実際に遺産を分ける話し合いをするときにも、そのまま残っている財産です。

不動産や預貯金といったプラスの財産のみならず、借り入れやローンなどのマイナスの財産も計算します。

④ 遺産の評価

不動産の評価では、不動産会社の査定書や相続税の評価額などの資料を参考に、相続人の間で不動産評価額の合意を行います。

合意できない場合には、裁判所が鑑定を実施します。鑑定を担当するのは相続人と利害関係のない不動産鑑定士です。鑑定結果の公平性が高い一方で、思い通りの額が認定されない可能性があること、高額な鑑定費用がかかることには注意が必要です。

⑤ 具体的相続分の算定

遺言や民法から相続分を確定した後、特別受益・寄与分を考慮し具体的相続分を算定します。

【相続分】

民法の法定相続分は次のとおりです。

配偶者 子 親 兄弟姉妹 備考
配偶者と子 1/2 1/2 なし なし
配偶者と親 2/3 1/3 なし 子がいない場合
配偶者と兄弟姉妹 3/4 1/4 子・親がいない場合

配偶者がいない場合には、①子、②親、③兄弟姉妹の順で優先的に相続することができます。子や親、兄弟姉妹が複数人いる場合には、法定相続分を人数で均等に分けます。

【特別受益・寄与分の考慮】

特別受益や寄与分があるときは、対象者の相続分を調整します。

特別受益とは、生前の契約や遺言書によって、故人が相続人に贈与した財産などのことです。相続人間の公平を期すために、特別受益を得た相続人はその分相続分を減らさなければなりません。

寄与分とは、生前、故人の看病をしたり、財産を管理したり、家業を無給で手伝ったりしたことで、遺産の増加や減少防止に特別貢献した相続人の実績のことです。寄与分を有する相続人は、自分の相続分とは別に、寄与分の遺産を取得することができます。

⑥ 分割方法の確定

各相続人の取得希望を考慮した上で、相続分に従い遺産を分割します。

遺言書がある場合の手続きの流れ

遺言書があるときには、原則として遺言書の内容に従って財産を引き継ぐため、遺産分割の話し合いは行いません。ただし、相続人全員の合意がある場合など、例外的に遺言とは異なる分け方を協議して決めることも可能です。

① 自筆証書遺言の場合

検認の手続きを行った上で、自筆証書遺言に基づく不動産の名義変更を行います。

② 公正証書遺言の場合

検認手続きは不要です。公正証書遺言に基づく不動産の名義変更を行います。

ただし、遺言書の内容が遺留分(配偶者や子などに最低限保障されている遺産の取り分)を侵害しているときは、別途紛争が発生することがあります。

よくあるご質問

複数の相続人が特定の不動産を欲しがっている場合どうなる?

相続人間での協議による合意ができない場合、最終的には次のような状況を総合考慮して裁判所が審判で決めます。

  1. ① 不動産の利用状況(現に誰が居住や管理をしているか)
  2. ② 代償分割を行う場合の「代償金(現金)の支払能力」

いくら強く取得を希望しても、法定相続分を他の相続人に取得させるだけのお金を用意できなければ、特定の不動産を取得するのは困難です。

不動産を相続したくない相続人がいる場合どうすればよい?

① 一部の相続人のみが取得を希望しない場合

不動産を取得したくない相続人は、取得を希望する相続人に不動産を取得させる代わりに、預貯金をはじめとする他の金融資産を受け取ることでバランスを取ることができます。

② 相続人全員が取得を希望しない場合

全員が不動産を不要とする場合は、不動産を売却して得た金銭を相続分に応じて分ける「換価分割」を行うのが有効です。

不動産を手放すことになるため、将来にわたって維持管理費や固定資産税などの負担を負い続けるリスクをなくすことができます

不動産の評価方法にはどのような方法がある?

不動産の評価方法は大きく分けて5種類あります。これらの評価方法を元にして不動産価格を協議します。

合意ができない場合、最終的には裁判所の鑑定額を元にして裁判所が審判で決定します。

① 路線価

相続税や贈与税の基準として用いられる価格です。

公平性の高い基準で算定されることから、実務上交渉のための参考価格として用いられることが多いです。

② 公示価格

不動産取引の基準価格として公示される価格です。国土交通省が毎年公示する価格であり信頼性が高いという特徴を有します。

③ 固定資産税評価額

固定資産税を算出する基準として用いられる価格です。

路線価同様に価格の公平性は高いです。しかし路線価よりも低額であるため、実務上は参考値程度に留まります。

④ 時価

時価は不動産取引市場における実際の価格です。

時価を算定できれば一番公平性が高い反面、正確な価格を算定することは極めて困難です。

時価の算定には、不動産会社作成の査定書が用いられます。しかし、無料査定の調査は簡易なものにとどまる上、査定者や査定依頼者の意思により金額が左右されることから、査定書自体の信頼性は高くありません。

⑤ 鑑定価格

鑑定価格は、不動産鑑定士が鑑定する価格です。

当事者間で合意ができない場合、調停・審判において鑑定を実施することがあります。鑑定は相続人と利害関係のない第三者(不動産鑑定士)が実施するため、算定された価格の公平性・正確性は非常に高いです。

しかし鑑定費用が1物件当たり50万円から100万円程度発生することが多いことに加え、鑑定期間が2か月から4か月程度かかるというデメリットがあります。

不動産の評価額は「亡くなった時」「分ける時」のどちらで計算する?

実務上、不動産の評価額は「分ける時」を基準にして計算します。

ただし、特別受益や寄与分の評価額は「亡くなった時」を基準にして計算します。

権利証(登記済証)がなくても遺産分割の手続きはできる?

権利証がなくても遺産分割の手続きを進めることはできます。

遺産分割の手続きに権利証は不要です。また、分割後に登記をするときも権利証は不要です。ただし、権利証(登記済証)がない場合には、不動産の名義変更(登記)の手続きが複雑になることがあります。

相続登記(名義変更)しないで放置するとどうなる?

相続登記を放置すると、10万円以下の過料(行政上のペナルティとして科される金銭的な罰則)が科されるリスクがあります。

相続登記は義務であり、相続により不動産を取得した日から3年以内に相続登記する必要があります。

まとめ:悩んだら弁護士に相談

遺産分割では、「不動産を売却し現金化したい」「家に住み続けたい」「遺産を譲りたくない」といった、相続人同士のぶつかり合いは珍しくありません。当事者だけで話し合いを進めるとどうしても感情的な対立が深まりやすく、解決までに何年も費やしてしまうことがあります。

さらに遺産分割には、状況に応じた分割方法の選択、不動産の登記手続、調停・審判の申し立てなど、高度な法律の専門知識が要求されます。

円満かつ迅速な解決を目指されるなら、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では長年培った経験を活かし、ご家族全員が納得できる解決策をご提案いたします。少しでも不安があればおひとりで悩まず、お気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 戸嶋瑞樹

遺言書作成などの生前対策から、相続後の遺産分割まで総合的に対応いたします。即時対応を信条とし、ご家庭の状況に合わせた柔軟な解決方法をご提案します。千葉県弁護士会所属(登録番号67448)。