原則として、遺産分割協議書は相続人全員の署名捺印が必要となります。
ただし、相続放棄をしている相続人や相続分を譲渡している相続人については、遺産分割協議書への署名捺印は不要です。
また、遺産分割協議書の署名捺印については必ずしも連名にする必要はありません。
1. 遺産分割協議書は相続人全員の署名捺印が必要
遺産分割協議書は、相続人全員の署名捺印がなければ、金融機関や法務局は受け付けてくれません。
遺産分割協議をしないまま、また相続が発生してしまい、相続人が20人以上ということもあります。
相続人が増えてしまっても、相続人の法定相続分が1/1000であっても、全相続人からの署名捺印が必要となります。
2. 価値の低い土地でも?
たとえ価値が高いとはいえない不動産であっても、相続人の1人に名義変更するためには、原則的には遺産分割協議書に現相続人の全員の署名捺印が必要となってしまいます。
ただし相続人が多い場合、遺産分割協議書の署名捺印を全相続人から順番にもらうことになると時間がかかります。
遺産分割協議書は印鑑登録証明書の添付が必要となることが多いのですが、印鑑登録証明書の有効期限は3か月以内としている場合が多いので、相続人が遠方であるとか、忙しいとかという事情によって、他の相続人からの署名捺印を待っている間に印鑑登録証明書の有効期限が経過してしまうことがあります。
3. 早く遺産分割協議書の署名捺印をもらうコツ
(1)相続放棄や相続分譲渡してもらう
価値が高くない不動産等の場合、予め相続人にその旨を伝えたうえで、相続放棄をしてもらったり、相続分の譲渡を受けましょう。
相続放棄や相続分譲渡は、相続人が個別にすることができます。
相続人が相続放棄を申述した場合や相続分譲渡を行った場合、その相続人の署名捺印がなくとも遺産分割協議書は完成します。
ただし、法務局等に提出する際には相続放棄申述受理証明書や相続分譲渡証書等を遺産分割協議書に添付する必要がありますので、ご注意ください。
(2)遺産分割協議書を個別署名方式とする
一般的な遺産分割協議書には、相続人は連名で署名捺印を行います。メリットとしては遺産分割協議書が一冊にまとまりますので、コンパクトでまとめやすく、1冊なので紛失のおそれは少ないと思います。
ただし、相続人が多い場合、順番に相続人1人1人から署名捺印をもらう必要があるので完成するのに時間がかかるというデメリットがあります。
遺産分割協議書は個別で相続人が署名捺印を行うことが可能です。簡単にいうと、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、各々から署名捺印をもらうという形になります。個別の遺産分割協議書をまとめ、1セットとして利用することになります。
メリットとしては、同時並行で各相続人から署名捺印をもらうことができるので、他の相続人の署名捺印を待つ必要がなく、相続人各自の署名捺印を行うことができます。
ただし、各遺産分割協議書のうち1つでも紛失してしまうと、再度その相続人から遺産分割協議書の署名捺印をもらう必要があるので、保管管理には注意する必要があります。
個別署名の遺産分割協議書でもあっても相続人全員が署名捺印されていれば、有効な遺産分割協議書として、法務局等でも利用することができます。
(監修者:弁護士 大澤一郎)