贈与時の金額をその後の物価指数に従って相続開始時の貨幣価値に換算して評価します

(回答:弁護士 大澤一郎)

相続の評価の基準時

相続のトラブルにおいては評価の基準時が問題となることがあります。行為時、死亡時、遺留分減殺請求権の通知が届いた時、合意の直近、事実審の口頭弁論終結時などがあります。

生前贈与の金銭の評価について

金銭については、貨幣価値の変動に伴い評価が異なります。そのため、生前贈与の金銭が特別受益としていくらになるかどうかを考慮するにあたっては、当時の額そのままではなく、貨幣価値の変動を考慮した修正をすることになります。具体的には日本銀行統計局の資料や総理府統計局の資料などがあります。

各財産による評価方法の違いについて

相続人においては、不動産・動産・株式など多数の財産が存在します。どの財産がいつの時点の評価となるかどうかについては様々な考え方がありますので自分が不利にならないように注意する必要があります。特に相当以前になされた生前贈与の場合には、大幅に評価が変わる可能性がありますので注意が必要です。

貨幣価値の変動の具体例

  1. 昭和9年と昭和21年で57.2倍とした裁判例
    (宇都宮家庭裁判所昭和49年9月27日審判)
  2. 昭和9年と昭和48年で719.5倍とした裁判例
    (宇都宮家庭裁判所昭和49年9月27日審判)
  3. 昭和16年と昭和38年で約270倍とした裁判例
    (新潟家庭裁判所昭和42年8月3日審判)

まとめ

以上のように、遺留分算定の基礎となる生前贈与を評価する場合には、贈与時の金額をその後の物価指数に従って相続開始時の貨幣価値に換算して評価します。(ただし、当事者間が合意した場合には合意した金額となりますし、必ず100%評価を換算し直すというわけではありませんので注意が必要です。

動画で見る相続:生前贈与と遺留分

(解説:大澤一郎 弁護士)

コラム:交通事故の逸失利益との違いについて

交通事故の場合、将来の収入についてはライプニッツ係数という特殊な係数を使って計算します。これは、交通事故の各種裁判例で使用されている数値で交通事故の事案ではこの数値を利用します。年5%の利息が付くという前提で、将来もらえるはずの金銭を現在もらう場合にはいくらと評価すべきかという計算をするための数字です。相続・交通事故等の様々な分野において、過去・将来の数値を出す方法は異なっています。

(文責:弁護士 大澤一郎)