手書きで作成した遺言書(自筆証書遺言)は、どこに保管すれば安心でしょうか?

なんとなくご自分の部屋の引出しにしまっている方に是非知っていただきたい制度があります。自筆証書遺言を法務省が預かってくれる保管制度です。

自筆証書遺言は、自分だけで、手書きで作成できるので手軽ですが、反面、次のような不安があります。

□ 法律で定められた形式を守れているか不安

形式にミスがあると、遺言書が無効になってしまいます。


□ 誰も見つけてくれなかったら?誰かが隠したり捨ててしまったら?

遺言書が相続人に発見してもらわないことには読んでもらうこともできません。
自筆証書遺言を自分で作成すること、保管することには様々は不安があります。

そこで、自筆証書遺言を作りたい、という方にお勧めなのが、法務局の自筆証書遺言保管制度です。

自筆証書遺言保管制度のメリット

① 遺言書の紛失・盗難・改ざんなどの心配がない!

自筆証書遺言の原本は、法務省においてに遺言者がなくなった後も50年間保管されます。また、原本だけでなく、画像データとしても保管され、こちらは150年間も保管されます。
原本が法務局にあるので、まず失くす心配がありません。また、一部の相続人などによる破棄、隠匿、改ざんなども不可能です。

② 形式面のチェックが受けられる!

遺言は、民法で厳格な方式が定められています。その方式から外れてしまうと遺言は全て無効になってしまいます。
法務局に自筆証書遺言の保管を申請する時には、形式面のチェックを受けることができます。そのため、形式的なミスで、遺言書が無効だった…なんてことになる心配をぐっと減らせます。

③ 亡くなったあと、自動的に通知を送ってもらえる!

あらかじめ、自分が死亡したときに、遺言書が保管されている旨を法務局から通知を送る人を指定しておくことができます。戸籍上で死亡の届けがなされると、その情報が法務局に共有され、自動的に通知が送られます。そのため、せっかくの遺言書が誰にも発見してもらえない、という心配がありません。

また、相続人の一人が保管されている遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して、遺言の保管所に遺言書が保管されていることが通知されるので、相続人の一人が抜け駆け、ということもしにくくなります。

④ 裁判所の検認手続きが不要!

通常の自筆証書遺言は、相続人が遺言書を裁判所にもって行き、検認の手続きを受ける手間がかかりますが、法務局で保管されていた自筆証書遺言は、検認の手続きを行う必要がありません。そのため、相続人の負担を軽くすることができます。

自筆証書遺言の注意点

自筆証書遺言は、法務省に預ける際に、形式面のチェックを受けることができる点が大きな魅力です。ただ、このチェックは、法務局が遺言書を預かるにあたってのあくまで形式的なものです。
絶対に無効にならないという保証はありません。

また、形式的には有効でも、その遺言書が、本当に遺言を遺す人の希望を叶えられる内容なのか?という内容面のチェックは受けられません。

遺言書は、あれば安心、というものではなく、『どういった内容にするか』が重要です。自筆証書遺言を作成する時にも、どういった内容にしたら自分の望みが実現できるか、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

より安心な遺言を遺すためには

自筆証書遺言の制度以外にも、遺言書を記録、保管する方法として、公正証書遺言という方法もあります。

公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で伝え、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認して作成する遺言書です(ちなみに、証人は公証役場で適切な人を用意してもらうこともできます)。

遺言書の記録は公証役場で保管されますので、遺言書の紛失・盗難・改ざんなどの心配がなく、形式面のチェックが受けられ、検認手続もいりません。
このあたりは法務局の自筆証書遺言の保管制度も同じです。

公正証書遺言では、さらに、法律家である公証人が、遺言書の内容や遺言者の意思を確認して作成するので、遺言が無効となる可能性は低いです。そのため、公正証書遺言は、自筆証書遺言を法務局に預かってもらうよりも、より安心な方法といえます。

(監修者:弁護士 坂口香澄)