遺産分割協議がまとまらない場合や、自分以外の相続人が話し合いに応じない場合、なんとか相続を終わらせるために遺産分割調停・審判を申し立てることがあります。
遺産分割調停・審判とはどういった手続きなのでしょうか。

遺産分割調停

調停とは、当事者が話し合いにより紛争解決を目指す手続きです。ふつうの遺産分割協議と異なるのは、裁判所(調停委員会)が仲介役として関与する点です。

調停委員会は、当事者の話し合いの中で合意をあっせんするという役割を担っています。調停では、相続人が一堂に会して話し合うのではなく、交互に自分の主張を調停委員に伝え、調停委員を通じて互いの意見を交換します。


調停委員会の構成

調停委員会は、裁判官1名(または調停官1名)と調停委員2名以上から成ります。

調停委員は、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には、原則として40歳以上70歳未満で、弁護士、医師、大学教授といった各分野の専門家のほか、地域社会で幅広く活動してきた人などからも選ばれます。

調停官は、調停事件について裁判官と同等の権限で調停手続を取り扱う裁判所の非常勤職員です。5年以上の経験を持つ弁護士の中から任命されます。

なお、家庭裁判所が相当と認めるときは、調停委員会でなく裁判官のみで調停を行うことができます。

申立ての手続き

相手方

調停の申立てに当たっては、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てることになります。一部の相続人を除外して申し立てることはできません。万が一、相続人が漏れたままで調停が成立した場合は、その調停は全部が無効となります。

申立先(管轄裁判所)

申立先は、相手方(他の相続人)のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所になります。
住所地の異なる相手方が複数いて、管轄裁判所が複数ある場合には、そのうちのどこかを選んで申し立てることができます。

なお、民事訴訟では、本来管轄でない裁判所に訴えを提起して相手がそれに応じた場合には、その裁判所は管轄権を有するようになるという規定があります(民事訴訟法第12条)。

しかし、家事事件手続法はその条文を準用していないため(家事事件手続法第245条第2項参照)、調停手続においては応訴管轄のような形で管轄は生じないと考えられます。

調停の進め方

調停は以下の①から⑤の順に進みます。

①相続人の範囲の確認

戸籍が事実と異なるなど、相続人の範囲に問題がある場合は、人事訴訟等の手続きが必要です。

②遺産の範囲の確定

原則として、被相続人が亡くなった時点で所有していて、現在も存在するものが遺産分割の対象です。

③遺産の評価

特に不動産等の評価額を確認します。評価について合意ができない場合には鑑定が必要になります。

④各相続人の取得額

法定相続分に基づいて取得額が決まります。特別受益や寄与分が認められる場合にはそれらを考慮します。

⑤遺産の分割方法

各相続人の取得額に基づいて遺産を分割します。調停では、合意によってどのような分け方もすることができます。

調停の成立

当事者に合意が成立し、調停委員会がその合意を相当と認めて調停調書に記載することで調停は成立します。

この調停調書は、確定した遺産分割審判と同じ効力を有します。
つまり、当事者が調停の内容に従わないときは、他の当事者は強制執行を申し立てて強制的にその内容を実現することができます。

調停が不成立になったら

調停はあくまで話し合いによる手続きなので、調停委員会が提示する分割案に納得がいかなければ合意しないという選択ができます。合意が成立しなければ、
調停は不成立という形で終了します。

調停が不成立で終了した場合は、その事件は自動的に審判手続きに移行します。
その事件について、調停を申し立てたタイミングで審判の申立てがあったものと扱われるのです。

成立した調停を覆すことはできるのか

調停も、理論上は取消されたり無効になったりする可能性があります。

取り消される場合:当事者に錯誤があった場合、詐欺があった場合等

無効となる場合:調停の内容が公序良俗や強行法規に反する場合、心裡留保の場合等

ただし、調停は調停委員会が仲介する手続きですので、上記のような事態が生じることはほぼ無いといっていいでしょう。
つまり、現実的には一度成立した調停を覆すのは困難です。

遺産分割審判

審判とは、裁判官が遺産の分割方法について決定する手続きです。裁判官は、当事者の主張や提出された証拠に基づき、各人の主張や年齢、職業、生活状況など一切の事情を考慮した上で、法定相続分を元として遺産の配分を決定します。

調停を経ずに審判の申立てができる?

一般に、家庭裁判所で調停を行うことができる事件については、まずは調停を申立てて調停が不成立となった場合に訴訟を提起できるという制度が採用されています。

まずは話し合いでの解決を目指すことが事案の性質に合っているというのがその理由です。

一方、遺産分割審判は、「訴訟」ではなく「審判」なので、厳密には調停を経る必要はありません。

相続人同士の対立が激しく、とても話し合いで解決できる状況でないといった場合は、遺産分割審判をいきなり申し立てることができます。

しかし、実務では、いきなり審判を申し立てても裁判所の判断で調停に付されることが多いです。

調停からの移行

遺産分割調停を試みたものの、調停が不成立になるとその事件は自動的に審判に移行します。

審判の進め方

審判の場合も、調停と同じように①相続人の範囲の確認、②破産の範囲の確定、③遺産の評価、④各相続人の取得額、⑤遺産の分割方法の順に進めていきます。

審判における不動産の分け方

調停では話合いで不動産を分けますが、審判では裁判官の判断で不動産を分割しなければなりません。
分割の方法については、以下の順に、①現物分割が困難であれば②代償分割、②代償分割が困難であれば③換価分割…と検討されます。

①現物分割

不動産そのものを分ける分割方法。複数の土地を複数人がそれぞれ取得したり、1つの不動産を分割して複数人が取得したりします。

②代償分割

ある相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う分割方法。代償分割の場合、不動産を取得する相続人は代償金の支払能力を立証する必要があります。

③換価分割

不動産を換価してその売却代金を遺産に含めて分けるという分割方法。

④共有

相続人全員が不動産の持分を取得し、皆で共有するという分割方法。

審判の内容に不服がある場合:即時抗告

遺産分割審判がなされると、当事者に対して相当と認められる方法で審判の内容が告知されます。
審判の内容に不服がある当事者は即時抗告を申し立てることができます。

即時抗告とは、審判に対する不服申立てです。
地方裁判所の裁判官の審判に対して不服申立てをすると、今度は高等裁判所で遺産分割の内容を判断してもらうことができます。

この即時抗告ですが、審判の内容が告知された日から2週間という期間 の間にしなければなりません。
この期間をすぎてしまうと、審判は確定し、覆すことができなくなります。

確定した審判の効力

確定した審判は、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行などを命ずる部分について強制力を有します。
つまり、当事者が確定した審判の内容に従わないときは、他の当事者は強制執行を申し立てて強制的に審判の内容を実現することができるのです。

調停・審判のポイント

当事務所が、遺産分割協議や遺産分割調停の依頼を受けた場合、当初から、依頼者に対して、「遺産分割協議や調停がまとまらなければ、審判においてこのような判断が下されると予想されます。」という説明を行い、調停・審判になった場合に依頼者の不利益にならないよう配慮しています。

また、調停・審判にした方が依頼者の利益になる場合には、調停・審判への移行をご提案します。

もちろん、調停や審判では、単に自分の主張を展開するだけでは、調停委員も裁判官も味方してくれません。調停委員や裁判所を味方につけるには、法律を知った上で適切な主張を展開することが重要です。

(監修者:弁護士 辻佐和子)

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