遺産分割協議書の内容に問題があると、相続人間でトラブルが生じることがあります。具体的には、遺産分割協議書を作成した後しばらく経ってから、遺産分割協議のやり直しを求められたり、遺産分割協議無効確認訴訟を起こされたりすることがあります。
そのため、相続紛争を引き起こさないためにも、遺産分割協議書を作成する際に、下記のような失敗がないようご注意ください。

失敗しないために注意する事

1.相続人全員の同意が必要であること 

遺産分割協議には、必ず相続人全員が参加する必要があります。相続人の一人を除外して行われた遺産分割は、原則として無効になります。
そのため、遺産分割協議書を作成する前に、被相続人の戸籍謄本を出生時から死亡時まで確認して、相続人の範囲を調査する必要があります。相続人のうち、前妻との子供や、養子等の存在は、見逃しがちですので注意が必要です。

また、「自分は遺産分割協議には参加していない」などと後で一部の相続人から争われることのないよう、遺産分割協議書には全員の署名押印(実印)をもらい印鑑登録証明書を添付してもらう、遺産分割協議書を相続人全員の住所に送って確認してもらうなどの工夫が必要です。

2.遺産分割協議前に遺言書がないか確認すること

遺産分割協議書を作成した後に、遺言書が発見された場合、遺言書の内容によっては、遺産分割協議書が無効になる場合があります。
そのため、遺言書が存在しないか、被相続人が利用していた引出し、書棚、貸金庫等を確認したり、公証役場で公正証書遺言を作成していないかどうかを確認したりする必要があります。
なお、相続人全員が、遺言書の存在を知っていて、遺言書の内容を知ったうえで遺言書とは異なる内容の遺産分割協議をすることは問題ありません。このようなケースでは、相続人は、遺言内容と異なるからといって後で遺産分割協議書の効力を争うことはできません。

3.遺産分割協議書を作成する際に他の必要書類も揃えておくこと

遺産分割協議書を作成後、不動産の所有権移転登記の手続きをしたり、預金の解約払戻し手続きをしたりするためには、印鑑登録証明書や、銀行所定の書類など、遺産分割協議書の他にも必要な書類がでてきます。

しかし、遺産分割協議書を作成した後ですと、一部の相続人がその後の手続きに協力してくれない(手続きに必要な資料を取得してくれない、資料に署名押印してくれないなど)ことがあります。
また、相続人の数が多いと資料収集に手間がかかります。

そのため、相続手続きに必要な書類を、弁護士、司法書士、銀行等に事前に質問しておき、遺産分割協議書を作成する際に、全ての関係書類に全相続人の署名押印をもらっておくのがよいです。

4.相続人のなかに未成年者、高齢者、行方不明者、海外在住者がいる場合には要注意

昭和55年以前に開始した相続については、現在の法律とは異なる法定相続分となりますので、注意が必要です。さらに遡って昭和22年5月2日以前に開始した相続については旧民法の家督相続となるので、注意が必要です。

実際に、私も、昭和55年以前に開始した相続の遺産分割協議を平成26年頃に担当したことがありますし、意外と長年放置されていた相続はありますので要注意です。

数次相続(被相続人の遺産分割が完了する前に相続人が亡くなるなど、複数の相続が重なっている場合)や、長年放置していた相続については、上記のとおり法定相続分を間違わないように、相続に詳しい弁護士に一度確認するなどしましょう。

5.相続発生時期が昭和55年以前の場合は要注意 

昭和55年以前に開始した相続については、現在の法律とは異なる法定相続分となりますので、注意が必要です。さらに遡って昭和22年5月2日以前に開始した相続については旧民法の家督相続となるので、注意が必要です。

実際に、私も、昭和55年以前に開始した相続の遺産分割協議を平成26年頃に担当したことがありますし、意外と長年放置されていた相続はありますので要注意です。

数次相続(被相続人の遺産分割が完了する前に相続人が亡くなるなど、複数の相続が重なっている場合)や、長年放置していた相続については、上記のとおり法定相続分を間違わないように、相続に詳しい弁護士に一度確認するなどしましょう。


遺産分割協議書について

遺産分割の問題を動画で解説

動画で見る相続:遺産分割について

(解説:大澤一郎 弁護士)

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