親族が亡くなってから相続が終わるまでの流れをご説明します。
この記事を読むと、相続の大まかな流れと注意点がわかります。

1. 相続財産の処分に注意!

(1)相続放棄できなくなる

まずは、無暗に相続財産を処分しないよう注意しましょう。

相続人が相続財産を処分してしまうと、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります。

民法

第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

5で述べるように、相続放棄をしたほうが良いケースもあるため、相続財産の処分については慎重になるべきです。

裁判例で以下の行為が「処分」にあたるとされています。

  • 被相続人の債権を取り立てて受領すること
  • 被相続人が有していた建物賃借権を相続したとして、賃貸人に対して賃借権の確認を求める訴訟を提起したこと
  • 一般的に経済的価値を有する被相続人の衣類を他人に贈与すること

「処分」をすると相続放棄できなくなりますが、一方で、「保存行為」や、民法第602条の期間※を超えない賃貸をすることは処分に当たりません。「保存行為」とは、家屋の修繕など、財産の現状を維持する行為のことです。

※の期間

  • 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
  • 上記賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
  • 建物の賃貸借 三年
  • 動産の賃貸借 六箇月

(2)他の相続人と揉める

相続財産を勝手に処分すると、他の相続人と揉める可能性が高いです。場合によっては、処分した財産以外の相続財産についても、一人で勝手に処分・隠匿したと疑われる可能性もあります。

2. 遺言があるか確認

遺言があれば、その遺言に従った内容の相続がなされます。遺言の有無の確認方法の例は以下のとおりです。

①自筆証書遺言保管制度を使っていた場合

被相続人が自筆証書遺言書補完制度を利用していた場合には、被相続人の死後、被相続人の指定した相続人等に遺言書が保管されている旨の通知がいきます。

②公証役場で確認

相続人等の利害関係人は、公証役場で被相続人の公正証書遺言があるかどうかを確認することができます。

③他の相続人や被相続人が生前親しかった人に確認

被相続人が、相続人のうちの一人や、親しい人に遺言を預けていることも考えられます。

④被相続人の自宅等を確認

被相続人が自宅等に遺言を保管している可能性があります。


遺言が発見された場合であっても、相続人全員が、遺言を無視して合意によって遺産分割協議をすることもあります(他に遺贈を受ける人がいる場合はその遺贈を受ける人の合意も必要となります。)。

遺言がどこにも無い場合には、相続人全員で6のとおり遺産分割協議をすることになります。

3. 自分が相続人なのか確認

そもそも、自分が相続人になるのか確認する必要があります。

自分が被相続人の配偶者や子であれば、ほとんどの場合は相続人になるのでわかりやすいです。しかし、それ以外の場合は迷うこともあるかもしれません。

相続人になるのは、①~④の人です。

  • ①配偶者(必ず相続人になる)
  • ②子
    →子が死亡や廃除などによって相続人で無くなった場合は、代わりに子の子
    →子の子が相続人で無くなった場合も同様
    →…(以下同様)
  • ③②に当てはまる者がいなければ、被相続人の直系尊属(被相続人に近い順)
  • ④③に当てはまる者がいなければ、被相続人の兄弟姉妹

①~④に当てはまる人でも、欠格や廃除といった制度によって相続人でなくなっている場合があります。

4. 遺産の内容を確認

自分が相続人であることがわかったら、5で説明する相続放棄の判断のために、できるだけ早く遺産の調査を進めましょう。

  • 相続財産の例:預金債権、不動産、株などの金融商品、貴金属、ゴルフ会員権など。
  • 負債の例:事業用資金の借入、知人からの借金、キャッシング残高、住宅ローン、自動車ローンなど

調査の方法としては、銀行口座の取引履歴や名寄帳を取得すること(相続人なら1人で可能)、自宅や事業所の不動産登記の確認、被相続人宛に届いた郵便物を確認する、知人に連絡して話を聞く、といったことが考えられます。

5. 相続放棄するかどうか決める

相続財産よりも負債のほうが大きく、遺産総額がマイナスとなる場合には、相続放棄をすることが考えられます。

(1)相続放棄の効果

相続放棄をした人は、最初から相続人でなかったものとして扱われます。そのため、プラスの財産もマイナスの財産も、まったく引き継がないことになります。遺産分割協議にも参加することはありません。

相続放棄をすると、代襲相続も起こらないため、相続放棄した人の子や孫が相続人になることもありません。

そのため、相続放棄をすれば、その人にとっての当該相続はそこで終了することになります。

ちなみに、形見の品については、経済的価値が認められない範囲であれば、相続放棄をした場合であっても受け取れる可能性があります。

物によっては価値があるかどうかわからないこともあるため、その場合には形見を受け取る前に一旦弁護士に相談したほうがいでしょう(「処分」と認定されると相続放棄ができなくなる可能性があります。)。

(2)相続放棄の方法

家庭裁判所に相続放棄する旨を申述することで相続放棄ができます。必要な書類や印紙を揃えて、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で申述することになります。

(3)相続放棄の期限

相続放棄の申述には下記の期限があります(「熟慮期間」と呼ばれます。)。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3カ月(民法915条1項本文)

「自己のために相続の開始があったことを知った時」は以下のように判断されます。

  • 相続について優先順位にある者が相続開始原因事実の発生を知ったときは、一応相続人であることを知ったと認定される
  • 法の不知や事実誤認で自分が相続人になることを知らなかった場合には、熟慮期間は進行しない

また、熟慮期間は家庭裁判所の手続きで1~3か月程度伸長してもらうことが可能です。

ただし、必ず伸長されるわけではありません。熟慮期間伸長の審判にあたって考慮される事項として、大阪高等裁判所の 裁判例は次のように述べています。

「相続の限定承認の期間の延伸の申立を審理するに当つては、相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の海外や遠隔地所在などの状況のみならず、相続財産の積極、消極財産の存在、限定承認をするについての共同相続人全員の協議期間並びに財産目録の調整期間などを考慮」する。

この裁判例は、相続人が限定承認も含めて検討していたという前提の事実があった事件のものですが、単純承認・放棄のみ検討している場合の考慮事項を考えるにあたっても参考になると思われます。

(4)限定承認はあまり使われない

よく相続放棄と一緒に紹介される制度として、限定承認というものがあります。

限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産も相続するというものです。つまり、プラスの財産の金額を超えるマイナスの財産は相続しなくていいことになります。

限定承認は一見便利な制度ですが、以下のようなデメリットがあります。

  • 相続人全員が共同で限定承認しなければならず、1人でも反対したら使うことができない
  • 熟慮期間内に、相続財産目録を作成して限定承認の申述をしなければならない。
  • 限定承認した人は、自分の財産を管理するのと同じ注意を払って、相続財産を管理しなければならない
  • 全ての相続債権者や受遺者に対して、限定承認をしたことなどを公告しなければならない
  • わかっている相続債権者や受遺者に対しては個別に請求の申出を催告しなければならない

このように大変煩雑な手続きが必要になるため、限定承認はその使い勝手の悪さからあまり使われることがありません。

6. 遺産分割協議をする

相続放棄をしないと決めた(または、相続放棄しないまま、放棄できる期間を過ぎてしまった)場合で、自分以外にも相続人がいる場合には、遺産分割協議をする必要があります。

遺産分割協議とは、相続人で被相続人の遺産をどう分けるか話し合って決めることです。

遺産分割協議の前提として、相続人の範囲を確定する必要があります。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を全部取り寄せて、把握している以外にも上記3の①~④の法定相続人が存在するかどうか確認していくことになります。

また、法定相続人以外に包括受遺者や相続分の譲受人も、遺産分割の当事者になります。

その後、4で説明したのと同様に、遺産の範囲を確定する必要があります。

ここで判明した遺産を、相続人で話し合って分けることになります。遺産分割協議が調ったら遺産分割協議書を当事者の人数分作成し、その全てに各自が署名押印して、一人一通ずつ所持するようにします。

注意しなければならないのは、遺産分割協議は「終わらせないと永遠に宿題として残り続ける」ということです。

被相続人Aの相続について遺産分割協議をしないと、その相続は終わらないまま宙ぶらりんになってしまいます。そして、Aの相続人BらのうちのB1が亡くなり、B1の相続人CらがB1の相続についての遺産分割協議を進めようとしたときに問題となって現れます。

このとき、Cらは、まずAの相続の遺産分割協議を片付けなければならないのです。

Aの相続人Bらがたくさんいて、さらにその相続人たちも複数亡くなっているといった場合には、相続人の数が数十人になることもあり、相続手続きは大変面倒なことになります。

7. 協議がまとまらなければ調停・審判

遺産分割協議がまとまらない場合や、相続人の一部が協議に応じないといった場合には、調停や審判を申し立てることになります。

(1)調停手続

調停手続とは、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

調停委員と裁判官からなる調停委員会が、申立人と相手方の言い分を聴いて、解決案を提示するなどして歩み寄りを促します。無事に調停が成立すれば、遺産分割はそこで終わります。

調停手続のメリットは、比較的短期間で終わり、費用も比較的安いことです。

調停が成立しなかった場合には、調停の申立てがあった時点で審判の申立てがあったものとみなされ、自動的に審判手続へ移行します。

民事調停手続

(2)審判手続

審判手続とは、裁判官が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果等種々の資料に基づいて判断し決定を下す手続です。

審判を申し立てても、裁判所の職権で調停に付されることもあります。

最終的に下された審判の内容に不服がある当事者は、期限内に即時抗告することで、審判の内容が確定するのを防ぎ、次は高等裁判所で審判してもらうことができます。

審判手続一般

(3)調停に代わる審判

遺産分割協議の内容自体にはみんな同意しているものの、印鑑証明の交付を拒否したり調停期日に来なかったりといった形で協力しない当事者がいる場合があります。

そのときは、「調停に代わる審判」という方法で解決できることがあります。

(4)遺産分割に関連する訴訟

ちなみに、訴訟手続で遺産分割自体が行われることはありません。

一方で、以下の問題につい ては訴訟で争われることがあります。

①遺産分割の前提問題

  • 遺産となる財産の範囲
  • 相続人の範囲
  • 遺言の有効性

②遺産分割に関連する問題

  • 遺産収益の分配(相続開始後に生じた賃料など)
  • 使途不明金

また、すでに行われた遺産分割協議の取り消しや無効確認を求めて訴訟が提起されることもあります。

(監修者:弁護士 辻佐和子)