お困りの問題 : , / 担当弁護士 :

ご相談までの背景

藤家泰二郎さんが所有する土地上に藤家泰二郎さんのお兄さんが所有する建物が存在していたところ、お兄さんが亡くなったあとその配偶者がその建物を使用していましたが、藤家泰二郎さんは、この建物の撤去を求めたいとお考えでした。

藤家泰二郎さん所有のその土地は藤家泰二郎さんがお母様から贈与を受けたもので、お母様が亡くなられてからそれほど時間が経過していませんでした。

そこで、相談を受けた弁護士は、藤家泰二郎さんが建物撤去要請の意思を表明することによりお兄さんの子からの遺留分減殺請求を引き起こしてはいけないと考え、藤家泰二郎さんのお母様が亡くなられてから1年を経過してから動き出しましょうと提案しました。

そうして藤家泰二郎さんのお母様が亡くなられてから間もなく1年を迎えるというころ、藤家泰二郎さんのお兄さんの子のみならず、藤家泰二郎さんのきょうだいからも遺留分減殺請求を行うとの内容証明郵便が藤家泰二郎さんのところに送られてきました。

そこで、本件の担当弁護士は、藤家泰二郎さんから依頼を受け、藤家泰二郎さんのお兄さんが死亡したことにより土地の使用貸借契約が終了したことなどを理由として、お兄さんの配偶者に対する建物収去土地明渡請求訴訟を提起しました。

亡くなられた方
(被相続人)
・藤家 佐登枝様(仮名・80代)
相続人 子(相談者)・藤家 泰二郎様(仮名・60代・柏市柏在住)
子(相談者のきょうだい)・藤家 直可寿様(仮名・60代)
子(相談者のきょうだい)・俄 佳津江様(仮名・60代)
孫(相談者の兄の子)・藤家 隆将様(仮名・40代)
相続人でない人 子の配偶者・藤家 菊奈様(仮名・60代)
遺産の内容 土地

弁護士が関わった結果

一審では藤家泰二郎さんの請求を認める判決が出され、お兄さんの配偶者が控訴し、高等裁判所に審理の場が移りました。

高等裁判所では、藤家泰二郎さんが、その土地に期間を10年とするお兄さんの配偶者のための事業用借地権を設定する方向で和解協議を進めました。

その協議を進めるに際し、弁護士は、お兄さんの子や藤家泰二郎さんのきょうだいから藤家泰二郎さんに対する遺留分減殺請求を撤回することを条件として提示しました(彼らは同一のグループに属する仲間同士でした。つまり、お兄さんの配偶者の味方です。)。

この条件の提示を受けたお兄さんの子や藤家泰二郎さんのきょうだいからは即座に「関係ないじゃないか」との反発が来ましたが、弁護士は、次の理屈を丁寧に説明し、遺留分減殺請求の撤回がこの和解協議を進めるうえでの当然の条件になることを示しました。

  • 藤家泰二郎さんに遺留分減殺請求をしてきた人たちの立場からは、この土地は、藤家泰二郎さんと遺留分減殺請求をしてきた人たちの共有状態にあることになる。
  • そうすると、この土地について、お兄さんの配偶者のための事業用借地権を藤家泰二郎さんが単独で設定してよいのかとの問題が生じる。
  • お兄さんの配偶者としても、賃料を藤家泰二郎さんだけに支払えばよいのか、それとも遺留分減殺請求をしてきた人たちに対しても支払わなければならないのか明確にならず困ることになる。
  • そうであれば、遺留分減殺請求を撤回することが、お兄さんの配偶者が安心してこの土地を借りて使用するための必須の条件になるはずである。

この説明を受けたお兄さんの子や藤家泰二郎さんのきょうだいは(繰返しになりますが彼らはお兄さんの配偶者の味方でした。)、遺留分減殺請求をしないこととする旨の意思表明を行いました。

弁護士からのコメント

当時の法律の理解を前提に、進行中の和解協議を利用して遺留分減殺請求の撤回まで至らせられないだろうかとの検討が、上記条件の提示及びそれに続く合意成立に結び付きました。

なお、現行の法律を前提とするとこの理屈は成り立たず、こんな条件を提示してもうまくいくはずはありません。


※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが関係者のプライバシー保護等に配慮し事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承ください。