お困りの問題 : / 担当弁護士 :

ご相談までの背景

相談者・宇佐美菊之輔さんは、亡くなった父の宇佐美丞太郎さんの長男でした。丞太郎さんは、奥様(菊之輔さん母)が亡くなられてからは、介護施設や病院にて、暮らしをしていました。

丞太郎さんが亡くなった後に、丞太郎さんの預貯金を調べてみると、生前に多額の払い戻しがありました。

丞太郎さんは、介護施設や病院で生活しており、施設代以外、ほとんどお金はかからない生活をしていました。

丞太郎さんの相続人は、菊之輔さんの他に、二男の宇佐美元徳さん、長女の枡梅十和子さんがいました。

生前の丞太郎さんの預貯金は、元徳さんが管理していました。しかし、生前の多額の払い戻しについては、元徳さんは、「丞太郎さんに全て渡して、丞太郎さんが使った」と言い張っていました。

このままで遺産分割が進まないため、菊之輔さんはよつば総合法律事務所に相談に来られ、遺産分割を依頼されました。

亡くなられた方
(被相続人)
・宇佐美 丞太郎様(仮名・90代)
相続人 長男(相談者)・宇佐美 菊之輔様(仮名・70代・千葉市緑区在住)
次男(相談者の弟)・宇佐美 元徳様(仮名・70代)
長女(相談者の妹)・枡梅 十和子様(仮名・70代)
遺産の内容 預貯金

弁護士が入った後

こちらは、丞太郎さんの生前の介護施設や病院の費用の明細を取得し、丞太郎さんにかかる費用の上限を示し、それ以外は使途不明金として、現状残っている預貯金について、遺産分割にて考慮するように求めました。

簡単にいうと、使途不明金について元徳への生前贈与と同様に扱って欲しいということを求めました。

元徳さん側としては、当初は「丞太郎さんに全て渡して、丞太郎さんが使った」という主張を続けました。埒が明かないため、こちらは遺産分割調停を申し立てました。

遺産分割調停では、看護記録や介護記録等の記載や、他の相続人である十和子さんの協力もあり、さらに調停委員会から元徳側への説得もあり、丞太郎さんが施設代以外で使ったというのは難しいという事実は、元徳側も認めてくれました。

結果として、使途不明金を考慮した遺産分割調停が成立し、菊之輔さんや十和子さんは法定相続割合以上の遺産を取得することができました。

弁護士からのコメント

亡くなった方の名義の預貯金については、他の相続人によって多額の払い戻しがなされていることは多々あります。

これらの預貯金の払い戻しは、使途不明金として遺産分割と合わせて問題となることが多いです。

遺産分割調停では、使途不明金について相続人全員の同意がなければ、遺産分割の内容として取り扱うことができません。

例えば、相続人の1人でも「使途不明金はない!」という主張をすると、使途不明金の問題が遺産分割調停では取り扱わないことになってしまうのです。

使途不明金の問題が遺産分割調停で取り扱わない場合、亡くなった方の預貯金を払い戻した相続人に対して、使途不明金の返還請求をするには、別に交渉あるいは訴訟提起が必要となります。

場合によっては、遺産分割調停と使途不明金に関する返還請求訴訟が同時並行することもあります。ここまでいってしまうと解決までに3年以上かかってしまうことがあります。

今回は、遺産分割調停の段階で、こちらが亡くなった方が「これ以上の金額を使えなかった」という主張や立証(資料の提出)が上手くいったため、遺産分割調停が成立することができました。

使途不明金が問題となる場合には、早期に解決するためには早期の資料の取得が必要になると思います。

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