法律上、遺贈・死因贈与・生前贈与があります。一番生前贈与が問題となりやすく、また、生前贈与にも3種類があります。

遺贈について

遺贈とは、遺言により遺言者の財産を無償で渡す行為のことです。遺贈は遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。

死因贈与について

死因贈与とは贈与者の死亡によって効果が生じる贈与契約のことです。法律的な形式は遺贈と異なりますが、遺留分の算定の上では遺贈と同様に考えて問題ありません。そのため、死因贈与は遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。

生前贈与について

生前贈与とは広く、故人が生前にした贈与のことを指します。遺贈・死因贈与は契約書・遺言書等の書類があることが多く、その内容は明確です。他方、生前贈与は書類がなかったり、過去にさかのぼっての請求となることが多いので、争いになることが多いです。生前贈与のうち、以下の3パターンが遺留分算定の基礎となる贈与となります。

(1)相続開始前1年以内の贈与(民法第1044条1項前段)

相続開始前1年以内の贈与は遺留分算定の基礎に含まれます。

(2)当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法第1044条1項後段)

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は遺留分算定の基礎に含まれます。

遺留分権利者に損害を加えることを知ってなしたかどうかの判断は争いとなることが多いです。通常、(ア)客観的に遺留分権利者に損害を加えるべき事実関係を知っていることと、(イ)将来の財産の増加がないことの予見の2つが必要と言われています。

(3)特別受益に該当する贈与(民法第903条)

相続人に対する贈与の場合には、相続開始前10年間になされた特別受益に該当する贈与が遺留分算定の基礎に含まれます(民法第1044条3項)。特別受益に該当する贈与には、婚姻又は養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与があります。これらの特別受益に該当する贈与については、特別の事情がない限りは遺留分算定の基礎となる贈与となります。

まとめ

遺留分においては、生前贈与の時期・額・目的などが問題となりやすくなっています。相続税申告書・預金通帳・契約書等の客観的な資料から生前贈与の時期・額・目的を主張・立証していく必要があります。

参考判例

  • 最高裁判所平成10年3月24日判決
  • 大坂高等裁判所平成11年6月8日判決

(監修者:弁護士 大澤一郎)