生前の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。死後の放棄は可能です。

(回答:弁護士 大澤一郎)

生前の遺留分の放棄について

生前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。家庭裁判所の許可が必要ですので、当事者間の合意で遺留分放棄に関する契約書を生前に作成してもその効果はありませんので注意が必要です。

生前の遺留分の放棄をする場合には要件として、

  1. 本人の自由意思に基づいていること
  2. 放棄の理由に合理性・必要性があること

が必要です。

遺留分の一部放棄について

生前の遺留分割合の一部放棄についても、家庭裁判所の許可があればできると言われています。他方、生前の特定の処分行為に対する遺留分減殺請求権の行使はできないという見解が有力です。

遺留分放棄の許可の申立の際に申立人が聞かれる事項について

遺留分放棄の許可を家庭裁判所に申立する場合、一般には以下のような事項について聞かれます。

  1. 申立人名義で遺留分放棄の許可が申立されていること
  2. 他の相続人について
  3. 被相続人と同居している家族の名前について
  4. 被相続人の財産について(宅地・農地・山林・建物・預貯金・有価証券・負債・その他)
  5. 遺留分放棄が申立人の真意に基づくものかどうか。
  6. 遺留分を放棄する理由について
  7. その他

遺留分放棄の許可の申立の際に被相続人が聞かれる事項について

遺留分放棄の許可の申立の際に、被相続人は以下のようなことを聞かれます。

  1. 遺留分放棄の許可申立がされている事実を知っているかどうか。
  2. 遺留分放棄の許可申立をするにあたり、申立人と話しあったか。
  3. 相続人は誰か。
  4. 被相続人と同居している家族は誰か。
  5. 財産としてどのような財産があるか(宅地・農地・山林・建物・現金・預貯金・有価証券・負債・その他)
  6. 申立人が遺留分放棄をする理由
  7. 申立人が遺留分放棄をした場合、不利益・不公平な結果となるかどうか及びその理由
  8. その他参考事項

死後の遺留分の放棄について

相続開始後は、遺留分の放棄は原則として自由です。遺留分減殺請求権を行使するかどうかは、各相続人が自由に判断できるためです。家庭裁判所の許可も必要ありません。

具体的な方法としては、遺留分減殺請求権を行使可能な相手方との間で合意書を作成したり、通知書を送付したりする方法が一般的です。

まとめ

以上のように、生前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。他方。死後の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可は不要です。生前の遺留分の放棄について念書のみを作成している事案がありますが、そのような念書は一般には効果がないと考えられていますので注意が必要です。

(文責:弁護士 大澤一郎)