最終更新日:2026年5月25日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林 義和

「亡くなった家族の遺品の中から、自筆の遺言書が見つかった。」

そのような場面では、内容が気になるのは自然なことです。

しかし、封がされていても、その場で開封してはいけません。多くの場合、「検認(けんにん)」という家庭裁判所での手続きを経る必要があります。

この記事では、遺言書の検認とは何か、どのような遺言書に必要なのか、そして実際の手続きの流れを解説します。自筆証書遺言を保管している方や、裁判所から検認の通知が届いた方は、ぜひご一読ください。

遺言書の検認とは

遺言書の検認とは、家庭裁判所において遺言書の存在とその内容を確認・記録する手続きです。

裁判所の公式サイトでは、検認について次のように説明されています。「検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です」(裁判所「遺言書の検認」より)。

つまり、検認には次の3つの意味があります。

  1. 相続人に遺言の存在や内容を知らせること
  2. 遺言書の形状・日付・署名など、現時点での状態を明確に記録すること
  3. 遺言書の偽造・変造を防止すること

ここで重要な点があります。検認は、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。検認を経たからといって、その遺言書が法的に有効であると確定するわけではないのです。

たとえば、遺言書が法律で定められた方式に従っていない場合や、遺言者に遺言能力がなかった場合は、検認後であっても裁判(民事訴訟)でその有効性を争うことができます。

なお、検認時の状況や相続人の発言は「検認調書」として記録され、後の裁判で重要な証拠となる可能性があるため、内容に疑義がある場合は事前に弁護士へ相談しましょう。

遺言書の検認が必要な場合

遺言書の種類によって、検認が必要かどうか異なります。次の表を参考にしてください。

検認が必要な遺言書 検認が不要な遺言書
自筆証書遺言(保管制度なし) 公正証書遺言
秘密証書遺言 法務局保管の自筆証書遺言

公正証書遺言は公証人が作成に関与するため偽造のおそれがなく、法務局で保管されている自筆証書遺言も同様に保全性が高いことから、いずれも検認は不要とされています。

なお、検認の要否は封の有無とは無関係です。封がされていない遺言書であっても、上記の「検認が必要」な種類に該当する場合は検認手続きが必要です。第三者に預けていた場合や銀行の貸金庫に保管されていた場合も同様です。

また、検認をしないまま放置した場合には、相続登記や金融機関での預貯金解約・名義変更といった実務手続きを進めることは通常はできません。

さらに、遺言の内容を確認できなければ、相続放棄(3か月以内)や遺留分侵害額請求(1年以内)といった期限のある判断もできないことがあります。遺言書を発見したら、早めに検認の準備を始めることが重要です。

遺言書の検認の流れ

遺言書の検認は、一般的に次の5つのステップで進められます。申立てから検認期日まで、全体で2〜3か月程度かかることもあるため、早めに動き出すことをおすすめします。

① 申立てに必要な書類の収集

家庭裁判所が検認期日を設けて相続人全員に通知を送るためには、相続人が誰であるかをあらかじめ確定させる必要があります。そのため、申立てには多くの戸籍謄本類の提出が求められます。

相続人の構成によって必要書類が異なるため、次の記載を参考に準備してください。

共通して必要な書類

共通して必要な書類は、次の通りです。

  1. 申立書(裁判所のウェブサイトからダウンロード可能)
  2. 遺言者(被相続人)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  3. 相続人全員の戸籍謄本

相続人の状況に応じて追加で必要な書類

相続人の構成によって、次の戸籍謄本等が追加で必要になります。

遺言者の子(第一順位)が相続する場合
  • 既に亡くなっている子(およびその代襲者)がいる場合、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
遺言者の直系尊属(第二順位)が相続する場合
  • 既に亡くなっている直系尊属(相続人と同じ代およびそれより下の代)がいる場合、その方の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
相続人が不存在、配偶者のみ、または兄弟姉妹(第三順位)が相続する場合
  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 既に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 代襲者である甥・姪で既に亡くなっている方がいる場合、その方の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

状況に応じて必要となるその他の書類

状況によっては、次のような書類が必要になることもあります。

  1. 遺言者の住民票除票
  2. 相続人全員の住所証明書(住民票または戸籍の附票)
  3. 遺言書の写し(遺言書が封緘されていない場合)

戸籍の広域交付制度

戸籍の広域交付制度により、本籍地がどこにあっても全国どこの市区町村窓口でもまとめて戸籍を請求・取得できます。

ただし、この制度を利用できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)に限られます。兄弟姉妹の戸籍は、請求者本人またはその父母が同じ戸籍に記載されていない限り原則として請求できません。

また、代理人による請求や郵送での請求は認められておらず、弁護士・司法書士などの専門職も含め、第三者が広域交付を利用することはできません。請求の際は窓口でマイナンバーカードや運転免許証など顔写真付きの身分証明書による本人確認が必要です。

さらに、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍謄本、戸籍の附票などは広域交付の対象外となっており、これらは従来どおり本籍地の役所に窓口または郵送で請求するなどする必要があります。

こうした制度を活用しながらも、故人が本籍地を何度も移していた場合や相続人が多い場合は、収集だけで数週間から1か月以上かかることがあります。手続き全体に要する期間を考慮し、遺言書を発見したら早めに動き出すことをおすすめします。

② 家庭裁判所への申立て

書類が整ったら、家庭裁判所に検認の申立てを行います。

申立人:遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人

申立先:被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

費用:遺言書1通につき収入印紙800円と、裁判所からの連絡に使用する郵便切手

窓口への持参だけでなく、郵送での提出も可能です。

なお、申立人は検認期日に裁判所へ出頭する必要があるため、当日立ち会うことができる方が申立人となるようにしましょう。

③ 検認期日の調整・確定

申立てが受理されると、数週間から1か月ほどで家庭裁判所から申立人に連絡が入り、検認を実施する日時(「検認期日」)の日程調整が行われます。なお、検認期日は裁判所の開庁日である平日(祝日・年末年始を除く)のみ設定されます。

日程が確定すると、家庭裁判所から申立人および相続人全員に「検認期日通知書」と「出欠回答書」が郵送されます。申立てから検認期日までは、一般的に1〜2か月程度かかることが多いです。

④ 検認期日

指定された検認期日に、申立人が遺言書を持参して家庭裁判所に出頭します。他の相続人も立ち会うことができますが、出席は任意です。申立人以外の相続人は、立ち会えなくても問題ありません。

期日では、裁判官が立会人の前で遺言書の状態を確認します。封印のある遺言書は、この場で開封されます。裁判所は、遺言書の用紙や筆跡、印影、記載内容、日付、署名など、遺言の方式に関する事実を確認し、その結果を「検認調書」という公的な記録として作成します。所要時間は10〜15分程度が多いです。

当日の主な持ち物は次のとおりです。

  • 開封前の遺言書(原本)
  • 検認期日通知書
  • 身分証明書
  • 印鑑
  • 収入印紙150円分(検認済証明書の発行手数料)

⑤ 検認済証明書の受領

検認手続きが終了した後、申立人は「検認済証明書」の交付を申請します(手数料:収入印紙150円)。証明書は遺言書の原本に綴じ込まれ、割印が押された形で返還されます。

この検認済証明書が付いた遺言書は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約・名義変更といった相続手続きを進める上で、必要不可欠な書類となります。大切に保管してください。

検認が済んだら、遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていきましょう。遺言書に記載のない財産がある場合は、その部分について相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

遺言の効力に争いがある場合や、相続税申告が必要な場合は、弁護士・税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

よくあるご質問

ここでは、遺言書の検認についてよくいただく質問にお答えします。

検認が終わるまで銀行口座の解約や名義変更はできない?

検認が終わるまで、銀行口座の解約や名義変更は事実上できません。

法律上は検認を経なくても遺言の効力自体に影響はありませんが、不動産の相続登記や金融機関での預貯金の名義変更・解約といった実務手続きでは、検認済みの遺言書(または検認済証明書)の提出を求められるのが一般的です。

そのため、これらの手続きを行うためには、検認を終えることが事実上の前提条件となっています。

遺言書の検認はどのくらいの期間がかかる?

準備開始から検認期日まで、一般的には2〜3か月程度かかることが多いです。

申立てに必要な戸籍謄本一式の収集だけで、相続人の数や家族構成によっては数週間から1か月以上かかることがあります。また、申立て後も、家庭裁判所が相続人全員へ通知を送るため、申立てから検認期日まで1〜2か月程度の期間が必要です。

相続放棄(3か月以内)や相続税申告(10か月以内)などには期限があるため、遺言書を発見したら早めに動き出すことをおすすめします。

検認すれば有効な遺言書と確定する?

いいえ。検認しても有効な遺言書と確定しません。

検認はあくまで遺言書の偽造・変造を防ぐための「証拠保全」の手続きであり、遺言の内容や方式が法的に有効かどうかを判断するものではありません。

遺言書の方式に不備がある場合や、遺言者の遺言能力に疑問がある場合など、有効性に争いがあるときは、別途「遺言無効確認訴訟」などの裁判手続きによって解決を図る必要があります。

検認期日当日に欠席してもよい?

はい。申立人以外の相続人は検認期日当日に欠席しても問題ありません。

申立人以外の相続人に出席する義務はなく、検認手続きは、相続人全員がそろわなくても進められます。ただし、遺言の内容をその場で確認したい場合は、出席するのが最も早い方法です。欠席した場合でも、後日家庭裁判所に「遺言書検認調書謄本」を請求することで遺言の内容を確認できます。

なお、申立人は出頭する必要がありますので、出席してください。

遺言書が複数ある場合どうする?

複数の遺言書が見つかった場合、日付の新しい遺言書が優先されます。民法では、後の遺言が前の遺言と内容的に抵触する部分については、後の遺言によって前の遺言が撤回されたものとみなすと定められています(民法1023条)。

ただし、検認が必要な種類の遺言書が複数あれば、すべて検認しなければなりません。また、どの遺言書が有効かについて相続人間で争いがある場合は、最終的に訴訟で決着をつけることになります。

遺言書に封がある場合開けてもよい?

いいえ。勝手に開封してはいけません。

封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いのもとでなければ開封できないとされています(民法1004条3項)。

これに違反して勝手に開封すると、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。見つけた遺言書は、そのままの状態で家庭裁判所に提出してください。

遺言書に封はないが、検認は必要?

はい、封がない遺言書も、種類によっては検認が必要です。

検認が必要かどうかは、封の有無ではなく遺言書の種類によって決まります。公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言でない限り、たとえ封がされていなくても検認手続きが必要です。

検認手続きをしないとどうなる?

検認手続きをしないと、主に3つの不利益が生じます。

第一に、5万円以下の過料が科せられる可能性があります。正当な理由なく検認の申立てを怠ったり、検認を経ずに遺言を執行したりすることは、民法上の義務違反にあたります。

第二に、検認を怠ったことで他の相続人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。

第三に、実務上の手続きが進められなくなります。検認を経ていない遺言書では、相続登記も預貯金の解約もできません。

遺言書の検認をしなければいけない期間は?

法律では、遺言書の保管者または発見した相続人は「相続の開始を知った後、遅滞なく」検認を請求しなければならないと定められています(民法1004条1項)。

「○日以内」という明確な期限はありませんが、手続きを放置せず速やかに準備を進める必要があります。

相続放棄や遺留分侵害額請求などには期限があり、遺言書の内容を確認しなければこれらの判断ができないこともあります。遺言書を発見した時点で早急に動き出すことをおすすめします。

まとめ:悩んだら弁護士に相談

遺言書の検認は、故人の最後の意思を尊重し、円滑な相続を実現するための重要な第一歩です。しかし、戸籍の収集から裁判所への申立てまで、手続きは煩雑で相応の時間もかかります。

「手続きの進め方がわからない」「平日に役所や裁判所に行く時間がない」「他の相続人とのやり取りが不安」など、少しでもお困りのことがあれば、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、戸籍の収集から申立てまでの手続きを代行してもらえるだけでなく、検認後の遺産分割協議や相続手続き全般についてもサポートを受けることができます。

よつば総合法律事務所では、相続に関するご相談を60分無料で承っております。「まず話を聞いてみたい」という段階でも構いません。ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林 義和

副代表弁護士・税理士。千葉県弁護士会所属(登録番号44648)。