家庭裁判所の審判で最終的には解決します。

(回答:弁護士 大澤一郎)

特別受益とは

特別受益とは生前の贈与や遺贈について、遺産の先渡しと考えて公平の観点から相続分を算定する制度です。

特別受益の額について当事者間で合意ができた場合には、その合意内容に基づいて遺産分割をなすことができます。

特別受益の争い方について

特別受益の額については、当事者全員にての合意ができないことが多々あります。そのような場合、どのようにすれば解決できるでしょうか。

まずは、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をします。特別受益の額のみを確定させる調停の申立ではなく、遺産分割調停を申し立てすることとなります。

遺産分割調停の中で、話し合いで解決が付けば、特別受益の問題は解決します。

他方、遺産分割調停の中で解決しない場合には、遺産分割の審判の中で判断がなされます。審判は強制的な決定ですので当事者に対する拘束力があります。

審判に対して不服がある場合には、即時抗告を行うことにより高等裁判所で審理をすることになります。

特別受益について民事裁判で争うことができますか。

特別受益であることを確認する民事訴訟は起こすことができません。

そのため、特別受益であることを確認することを求める訴えは不適法でありできないと考えられています。

特別受益の争い方について

私たちの経験上、特別受益については一度争いとなると、なかなか合意で決めることは難しいことが多いです。

まずは、証拠をきちんと集めることが全ての出発点です。

過去の預金通帳や不動産の権利関係に関する全部事項証明書、不動産の売買契約書やその他の各種契約書を集めて、特別受益に該当するかどうかについて判断が可能な証拠をまずはそろえましょう。故人からお小遣いをもらったなど細かい支出については特別受益の対象とはなりませんので、大きな支出を中心に検討しましょう。

全体を考えた解決をしましょう。

特別受益の問題は、遺産分割全体を考えた解決が必要です。特別受益の問題のみが解決しても遺産分割全体の問題は解決しません。

早期に解決する、家族仲を決定的に破壊しないで解決をするということも重要です。特別受益の問題で白黒を絶対に付けようと思うと、遺産分割の問題の解決に2~3年かかってしまうことが多いです。

そのため、全体を見据えた解決をすることが望ましいでしょう。

参考判例

  • 最高裁判所昭和41年3月2日判決
  • 最高裁判所平成7年3月7日判決

(文責:弁護士 大澤一郎)