無断引出という違法な行為によって損害を被ったために損害賠償請求することを不法行為による損害賠償請求といいます。無断引出によって理由なく利得している金員を返せと請求することを不当利得による返還請求といいます。

1.不法行為として損害の賠償を請求する方法

引出行為が被相続人に無断で行われたものであるとすれば、不法行為や不当利得という法律構成で、引き出した人に請求をすることが検討されます。

不法行為とは、違法な行為をされたから損害賠償請求をしたい、といったような日常生活では馴染みのある概念です。

厳密には、権利又は法律上の保護される利益の侵害行為、侵害行為に故意又は過失があったこと、損害の発生及びその金額、因果関係、といった要件がそれぞれ認められる場合に請求が可能となります。

例えば、被相続人の口座から、相続人の一人が、無断で預金を引き出した場合、被相続人の預貯金債権が、相続人の故意によって侵害されており、引き出された金額が損害といえるため、被相続人に損害賠償請求権が発生します。なお、「損害」については、さらに、引き出したお金を着服したこと、私的に流用したこと、その他被相続人の意思に反する態様の利用をしたことをもって認定するという見解もあります。

被相続人に不法行為に基づく損害賠償請求権が発生する場合、この損害賠償請求権を、他の相続人が相続することで、無断引き出しを行った相続人に損害賠償請求を行うことが可能となります

2.不当利得として返還を請求する方法

不当利得とは、法律上の理由もないのに、金銭やその他利益を得た人に対して、これを返せ(返還しろ)というための手続きです。

法律的には、被相続人の損失(預貯金債権の消滅)、引き出した人の利得、引き出した人に引き出し権限が存在しないこと、因果関係が要件となります。

これも同じく、被相続人の口座から、相続人の一人が、無断で預金を引き出した場合、被相続人の預貯金債権が消滅しており、一方で引き出した人は引き出した金員を利得したことが認められ、引き出した人にその権限がない場合には、被相続人に不当利得返還請求権が発生します。

そして、不当利得返還請求権を、他の相続人が相続することで、無断引き出しを行った相続人に引き出したお金を返せという請求を行うことが可能となります。

3.二つの法律構成の違い(時効)

以上、無断引出を追及するためには、二つの法律構成がありますが、争点の重なる部分が多くあります。

どちらの構成を採用するかという点で、検討しなければいけないのが、時効の問題です。

不法行為の場合、無断引出から3年で消滅時効期間が経過してしまうのに対して、不当利得の場合これが10年となります。

ですので、引出から3年以上経過している(現実このような場合も多いと思います。)場合には、不当利得の構成を積極的に検討することになるでしょう。

なお、時効が迫っている場合には、早急に時効を中断する措置を講じる必要があります。