令和3年4月21日に、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立したことはこれまでも当事務所のコラムでお書きしたことがあります。
この法改正の内容は多岐にわたるのですが、ここでは、特別受益や寄与分の主張の期間制限についてお書きします。
1. 改正法施行前
これまでは、特別受益や寄与分の主張は、いつでもすることができました。
2. 改正法の内容
相続開始のとき(被相続人が亡くなられたとき)から10年を経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなります。
3. 例外
(1) 相続開始から10年が経過する前に相続人のうちのどなたかが家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てたときは、特別受益や寄与分の主張の期間制限の規定は適用されません。
(2) ところで、遺産分割の調停や審判の申立てがなされた後、その申立てが取り下げられると、その後は、特別受益や寄与分の主張の期間制限の規定が適用されることになります。
そこで、改正法では、遺産分割の調停や審判の申立ては、相続開始から10年が経過したときは、相手方の同意がなければ取り下げることができないこととされました。
(3) なお、被相続人の生死が長年不明であった場合など、遺産分割の調停や審判の申立てをできないやむを得ない事情があったときも、期間制限の規定が適用されないことがあります。
4. 法改正の理由
近年社会問題となっている所有者不明土地の発生を防止することが主眼です。
遺産分割は、
(1) 法定相続分または遺言により指定された相続分をもとに、
(2) 主張された特別受益や寄与分を考慮して具体的相続分を算定し、
(3) その具体的相続分に応じて遺産分割を行う。
という流れで行うのですが、この(2)の主張ができる期間を制限することにより、
- (2)の主張を行うことを考えている相続人に相続開始から10年以内に遺産分割協議や家庭裁判所への申立てを行うよう促す。
- 相続開始から10年を経過したときは⑵の審理が不要となり、法定相続分または遺言により指定された相続分による分割を行えば足りることになるから、家庭裁判所で結論が出るのが早くなる。
というねらいがあります。
5. その他
ある相続人に特別受益や寄与分があり、それを考慮した遺産分割を行うことに相続人全員が合意することは、相続開始から10年を経過した後も禁止されるわけではありません。
6. いつから施行されるのか
これらの改正法は、令和5年4月1日に施行されます。経過措置として、
- 平成30年3月31日以前に相続開始があったときは、令和10年4月1日からは特別受益や寄与分の主張制限などの改正法が適用される。
- 平成30年4月1日以降に相続開始があったときは、相続開始のときから10年を経過したときに特別受益や寄与分の主張制限などの改正法が適用される。
ということになっています。
相続についてお悩みの際は専門家にご相談ください。